ウルトラガール
7.『ウォーターフロント』

「わあっ!瑠奈ちゃん焼けてるね。」
  夏休みが終わり、9月となったもののまだまだ残暑が厳しい。今日の3時限目は体育、2学期最初の水泳授業だ。
 更衣室で着替えていると、菜穂ちゃんが話しかけてきた。
「そお、ちょっと焼き過ぎたかしら。」
「あっ、その跡はビキニ? それも胸の方は跡がついてないからトップレス! す、すごい! 瑠奈ちゃん大胆!」
「え、いえ! あ、そ、そうなの。ちょ、ちょっと大胆だったわね。」
「もしかして海外で焼いたの?」
「えっ、いえ、神戸の須磨浦海岸と・・・、あと四国でちょっとね・・・。」
まさか瀬戸大橋でとは言えなかった。
「へえっ、月里さん。四国へ行ったの?」
隣で着替えていた四条靖子が会話に入って来た。
「え、そ、そうだけど。」
「私のうち、田舎が高松でね。ちょうどその日に五色台に行ったら、なんか凄い光景を見ちゃったの。それがもの凄くって・・・でもそれが何だったかは不思議なんだけど思い出せないの。もしかして月里さんもそれ見た?」
そう言うと四条靖子は、ぽっと顔を恥ずかしそうに赤らめた。
あわわっ、それって私の事だわ。
「い、いや。わ、私知らないわ。四国って言っても徳島の方だったから。」
あぶないあぶない。クラスメイトが見ているのを忘れてた。どうもこのカモフラージュは効き目が中途半端だ。
 

  3時限目が終わり、4時限目は数学だ。いつもこの時間は体育の後の程よい疲労感で眠たくなっちゃうのだけど今日は特に水泳の後だ。体の中からぽかぽかしてなんとも気持ちいい。
 

 あっ・・・また出たわねカーカ星人!その手には乗らないわよ。と思ったら後ろで、ふぉっつふぉっつ鳴いてるハサミを持った怪獣が私を羽交い締めにしている。ちょ、ちょっと!いっぺんに出てくるなんてなしよ!あ、だめ、触手がまた私の胸に這って来た。そ、そんなに揉んじゃだめ!あ、あああっ・・・・・
 

はあ、はあ、はあ、はあっ・・・。何だ夢か・・・。
 周りを見ると皆、静かに授業を受けている。誰も私の方を見ていないって事は幸い寝言は言ってなかったようね。でもなんかまだ胸を揉まれている感じ、それも左側だけ・・・。左胸に手をやるとブルブル震えているものがある。あっ、忘れてた!
  瑠奈は胸ポケットから携帯電話を取り出した。授業中に呼び出し音が鳴るとまずいのでバイブレーターコールにしていたのだった。
「誰からだろう?」
ディスプレーを見ると、
『12:00  SE 20km』
えっ、これってウルトラガールの出動要請って事?  バイブレーターコールだと普通の電話と違わない訳か。でも心なしか振動がいつもの『FLY ME TO THE MOON』のメロディに合わせていたような気がするけど。
 時計を見ると11時50分。授業が終るのが12時30分。
「授業を抜け出す訳にも行かないし、どうしよう・・・」
 そうこうするうちに12時を過ぎてしまった。何も起こらない。
「まあいいか、授業が終ってからにしよう。」
何も起こらないはずである。20kmも離れた先に怪獣は出現するのだから。
 

 チャイムが鳴り授業が終った。と同時に瑠奈は急いで駆け出した。
「あっ!瑠奈ちゃん。どこへ行くの?お昼食べよ。」
菜穂ちゃんが呼び止めた。
「ごめん。ちょっと用事が・・・」
「えっ用事?  何の用事なの? ちょ、ちょっと瑠奈ちゃん待ってよ・・・」
 
 

 体育館の裏にやって来た。
以前もここで変身したから大丈夫のはず、幸い出来たばかりの新校舎からも見えない。周りを見回して誰もいないことを確認してから携帯電話を持った右手を上に伸ばし、通話ボタンに親指をかけた。
「ん? ちょっと待てよ」
ディスプレーを改めて見る。
『12:00  SE 20km』
「もしかして南東20kmというと東京湾かしら?  それじゃあこの格好はまずいわね。」
瑠奈は制服姿。急いで教室に戻った。
 
 

「あっ!瑠奈ちゃん。用事終ったの?」
教室へ駆け足で戻ってきた瑠奈は急いで鞄の中から袋を取り出した。
「ごめん。いま急いでるの。先食べてて・・・」
再び教室を後にした。
「ねえ?ちょ、ちょっと、瑠奈ちゃん・・・」
 
 

 先ほど体育の時間に使った更衣室へやってきた。水着を袋から取り出し着替えはじめた。
「うわっ!やっぱり気持ち悪い」
1時間前に使ったばかりなので当然生ぬるく濡れている。
「あれ?月里さんじゃない」
誰もいないと思っていたのに急に声をかけられ、びくっとして声の方を振り向いた。
「あっ、四条さん。・・・お昼は?」
そこには授業用のとは別の競泳水着姿の四条靖子が立っていた。
「私は練習の後で食べるの。月里さんは?」
「わ、私?  あっ、私もちょっと泳いでからにしようと思って・・・」
「それにしても珍しいわね。月里さんが水泳の練習に来るなんて。」
「ちょ、ちょっとね。あっ、いけない。教室に忘れ物してきちゃった。」
そう言って瑠奈は水着の上から制服を急いで着て更衣室を後にした。
 

 ふう、あぶない。そういえば四条さんて水泳部だったんだわ。それにしても練習熱心ね。昼休みも練習するとは・・・
 再び体育館の裏にやって来た。ここで制服を脱ぎ捨て、空を仰いで両手を頭上にあげてぴょんぴょん飛び上がりながら通話ボタンを押した。

***

  さてと東京湾上空にやって来た。怪獣が大暴れしているはずと思っていたものの見当たらない。ただし船は数多く転覆していて船底を上に向けている。
「しまった遅かったか!30分も遅刻しちゃ、そら怪獣も引き上げちゃうわね。」
仕方ない、怪獣がいないのなら帰ろう。が、ちょっと気になることがある。なぜ陸上部は破壊されていないのだろう?やっぱりまだ海の中にいるかしら。
 そう思って、お台場海浜公園に着地した。目の前にはレインボーブリッジが見える。
「あっ、吊り橋・・・また体が勝手に動いちゃういそう・・・・うううん、だめだめ。以前のようなはしたないことは出来ないわ。それにお台場には放送局があるのよ、いくらカモフラージュが効いているとはいえ全国に放送されちゃうわ。」
 レインボーブリッジには目もくれずに瑠奈は調査のために海に入った。またとんでもなく深くなっていたらどうしようかと、そろりそろりと足を進めたが、その心配はなかった。どこまで行っても幼児用プールのように膝ぐらいしかない。これなら大丈夫だとさっそく港の外へ向かった。
「それにしても気持ち悪い、海底はヘドロでぬるぬるだわ。」
周りを見てみると海面には船の残骸やらがいっぱい浮いている。その時、
「キャーッ!」
転んで大きく尻餅をついてしまった。ヘドロで足を滑らせてしまったようだ。胸のところまで水につかり、水面にヘドロがぼわっと巻き上がってきた。
「うわっ、きしょくわりっ!」
急いで立ち上がろうとした。しかし、なぜだか立ち上がれない。足が動かないのだ。ヘドロで足が抜けないのかなと思い、両手で支えて立ち上がろうとした。が、それでもだめだ。それどころか逆に足が何かに引っ張られている。足だけではない手も何かに引っ張られている。
「ちょ、ちょっと!どうなってるの?! わぁ、わぁぁぁぁ!!」
手が左右に強い力で引っ張られる。瑠奈は全く身動きできないまま仰向けの状態となって、水中にゆっくりと引き込まれていく。
「くっ、苦しい・・・」
海水が顔にかかって息が出来ない。そこへ何かグニャグニャした固まりが水着の中へ入って来た。
「あ・・・・あああ!」
瑠奈の胸を何かがもみしだいている。それだけじゃない、股間もまさぐり始めた。
「あっ!だめ!そこは・・・」
苦しさと快楽の狭間でもがいていると、海底の方からかすかに声が聞こえて来た。
「ゲルルルル、これはウマそうな獲物だゲルルルルッ・・・オッパイの感触は最高だゲルルッ・・・」
 あっ、これは怪獣!それも風紀上問題なやつだわ!こんなところに潜んでいたのね。でも体が動かない。く、口の中にも入って来た。このままじゃ本当に犯されちゃう、それも得体の知れない未知の生物に・・・
 口の中に入ってきたのは何やらつるつるした物だ。も、もしかして巨大クラゲ?!
「ぎゃああああ!!」
あまりの気持ち悪さに大声を張り上げ、力いっぱい振りほどいて、目の前の陸地に一目散に逃げた。
「はあはあはあ・・・な、何なの一体あれは・・・ああっ気持ち悪かっ・・・きゃああっ!!」
陸地に上がった途端、急に目の前を何かが轟音を響かして高速で横切った。瑠奈は反射的避けた。が、
ドッポーン!!
以前と同様に再び海に落ちてしまった。
「げほっ、げほっ・・・い、一体何なの。今度は?」
海水でむせながら立ち上がってみると目の前の陸地には飛行機がずらっと並んでいる。
「こ、ここは・・・どこ?」
瑠奈は羽田空港C滑走路の北端部分に逃げ込んだのだった。もう少しで離陸する飛行機に当たるところだった。
「それにしても飛行機といえば・・・」
前回の関西空港の事が思い出されてしまう。思わず上陸してフラフラとターミナルビルの方へ歩いてしまった。
「だ、だめよ、私はウルトラヒロインなのよ。さっきの怪獣を倒さないと。それにしても今日はレインボーブリッジといい飛行機といい私をハメようとしているのが見え見えだわね。私はそんなハシタナイ女子高生じゃないの。もう夏休みの時のような恥ずかしい事はしないからね。」
 くるりと向きを変え、再び海に向かった。
「で、でも・・・あの気持ち悪い海にはもう入りたくないなあ。しかしウルトラヒロインなんだからそんな無責任な事は出来ないわよね・・・」
仕方なくそっと海に片足を入れた。
「うわあっ、やっぱりきしょく悪い!」
海底がさっきよりもヘドロの層が厚く、ぬるぬるする。
 再び先ほどの海域に慎重に向かう。歩を進める度に、ぼわっとヘドロが巻き上げられて海面が黒味がかる。今にもさっきの気色悪い怪獣が出てきそうだ。しかし辺りを見渡しても巨大クラゲらしいものは見当たらない。
 いなさそうだし、もお帰ちゃおうかな。そうだわ、さっき声が聞こえたのだから相手は喋れるはず。
「私はウルトラガールよ。あなた何者?正々堂々と私と戦いなさい!」
「ゲルルルル、我輩はゲル状生命体、ゲルリン星人だゲルルルル。」
ほうら、やっぱり悪い宇宙人だ。それにしてもこんなに素直に返事をするとは思わなかったわ。
「ゲロリン星人、姿を現しなさい卑怯よ!」
すると海面が丸く膨らみ、透明なゲル状の巨大な海坊主みたいなのが現れた。
「ゲルル、ゲロリン星人ではないゲルリン星人だ!それにしてもウルトラガール、女子高生にしては中々いい胸をしてるではないか。ゲルル。」
「ふん!なによ、この卑猥な宇宙人。このウルトラガールが一発で倒してやるわ!」
手を腰に当てながら言ってやった。うん、決まったわ!自分でもほれぼれする。
「ゲルル、カッコつけてるつもりだろうがそれでは何をしても無駄だぞ。」
「え?なんでよ!」
「よく見てみろ。」
「キャーッ!」
体の方を見てみると肩ひもが外れて水着がずり下がりオッパイ丸出しになっていた。さっきゲルリン星人に襲われた時に外されたらしい。瑠奈は急いで両手で胸を隠してしゃがみ込み、海中に胸まで浸かって水着を直した。
「ゲルルルル、お前のオッパイの感触は最高だったぞゲルル。」
このエロ怪獣め、このウルトラガールに恥をかかせるとは許せないわ!
「こ、この変態宇宙人!これでもくらえ!」
瑠奈は急いで立ち上がりゲルリン星人に向かって助走をつけて得意の回転技を決めようとした。が、
バッシャーン!!
海底のヘドロに足を取られ、助走の途中でドテッとコケてしまった。
「うわっ、バッチイ・・・」
立ち上がってみると水着一面ヘドロまみれだ。
「ゲルルルル。泥まみれの巨大少女もなかなかだ。」
「フン!」
もお!あったまにきた!
 今度はコケないように助走無しでジャンプしゲルリン星人に蹴りを入れてやった。
ドドドーン!
しかしジャンプ力がつかないためにゲルリン星人の横をかすめただけだ。そのまま大音響を響かせて岸壁に立ち並ぶ倉庫に胸から突っ込んでしまった。
「いたたっ!」
建物を粉々にしてしまい、その瓦礫の中でうつ伏せになって苦しんでいると、ゲルリン星人がこちらに近寄ってきた。
「いけない・・・このままじゃやられちゃう!」
急いで瓦礫から這い出して、埋め立て地のだだっ広い道路を這いながら逃げた。
「はー、はー、はー・・・」
逃げながら、ふと後ろを見てみるとゲルリン星人は未だに岸壁のところにいる。
「あれ、追って来ないの? ・・・そうだわ今がチャンス!」
急いで立ちあがりゲルリン星人に向かって走った。
 瑠奈の走る振動で地盤の緩い埋立地の道路周辺の建物は崩れ、道路脇に駐車していた大型トレーラーは横転し、アスファルトの路面は大きく陥没した。しかし瑠奈は足元で起こっている事には気づかない。
「それっ!」
最後の数歩は倒立前転で決め、最後にひねりを入れて大きくジャンプをした。
「決まった!!」
助走が成功しただけあって、きれいに瑠奈のキックがゲルリン星人の脳天にヒットした。
ドボーン!!
巨大な水柱が東京湾に立った。
 ゲルリン星人のぷよぷよした弾力性のために瑠奈はトランポリンのように弾かれてしまったのだ。助走をつけただけあって弾かれる力も強く、遠くまで飛ばされてしまった。これでは全く攻撃技が効かない。
「ゲホッ、ゲホッ・・・あー飲んじゃった・・・」
海水を飲んでしまい四つん場になってむせっていると後ろの方から声がした。
「ゲルルル、中々やるなウルトラガール。しかしその程度ではワシは倒せんぞ」
ゲルリン星人がだんだんこちらに近寄ってきた。
「フン、私にはまだ隠し技があるのよ!」
急いで立ち上がり素早く両手をクロスした。
「もしかしてお前、光線技を持っているのか?」
「そうよ、これであなたもおしまい。地球の平和と風紀も守られるわ。」
「ちょっと待ってくれ、ワシは別に卑猥な事をやりに地球に来たのではない。」
「じゃあ何よ。」
「この星を戴きに来た。」
「それじゃもっと悪いじゃないのよ!」
瑠奈は再び構えた。
「ま、待て!話は最後まで聞け! 我輩はゲル状生命体なので水の中から出る事が出来ない。そこで相談だが、君に我々の手伝いをしてもらいたいのだ。」
「はあ?」
瑠奈は唖然とした。
「ちょっと、あんたバカじゃないの?  私を誰だと思っているの。ウルトラガールよ。何であんたを手伝わなきゃならないのよ!」
「ゲルル、そりゃそうだろうな、それじゃこれでどうだ。」
「えっ?  何よそれ?」
ゲルリン星人のゲル状の透明な体の中に小さな何かが見えた。
「小さくてよく見えないわ。」
「それじゃ拡大してやるよ。」
小さな点のようなものが一気に拡大されて見えた。それを見た瑠奈は息を呑んだ。
「し、四条さん・・・・」
さっき更衣室で会った競泳水着姿の四条靖子が、無色透明なゲル状の中でぐったりと横たわっていた。
「こ、殺しちゃったの・・・」
「死んじゃあいない、ただ気を失ってるだけだ。」
「どうして四条さんを・・・」
「さっきお前が陸地で倒れている時に、陸地へは追って行けないので、その間に人質でもと、ちょっと下水管の方に手を伸ばしたら丁度いい具合に捕まえられたんだ。知り合いか、こりゃあいい。」
「四条さんは関係ないでしょ、返しなさいよ!」
「おっと近づくな!さもなければ人質の命の保証はしないぞ!殺さないまでもこうしちゃうぞ!」
ゲル状の中で四条靖子のバストだけが動き出した。ゲルリン星人が揉んでいるのだろう。
「ゲルルルル・・・こりゃいいわい!」
「や、やめなさいよ!」
「じゃあ、やってくれるんだな。」
 瑠奈は迷った。私はウルトラヒロインよ、怪獣の手伝いなんて出来るはずがない。でも四条さんが人質に取られている・・・どうしよう。両方解決できればいいがその方法が思いつかない・・・。仕方ない、人質優先だわ。
「わかったわ。」
「物分かりがいいな。」
「ちょっと待って。ところで手伝いって何をするの?」
「ただワシの言うとおりにするだけだ。それじゃあ早速取り掛かってもらおう。まずはそこの橋からだ。」
 ゲルリン星人が指差した方を見ると、近くに途切れた橋が見える。それが向こう岸まで続いている。
「何かしら・・・工事中の橋?」
「ゲルルル。お前これが何か知らんのか。大国家プロジェクトの東京湾横断道路。アクアラインではないか。」
「アクアライン? そう言えばそんなのが出来たというニュースが昔あったような・・・」
「ゲルルル!お前、大動脈のアクアラインも知らんのか。」
 瑠奈が知らないのも無理はない。確かに事業費1兆4400億円(という事は瀬戸大橋と同じくらいか)の大事業だったアクアライン。しかし当初見込みの半分以下の通行量しかない大赤字路線だ。どうもゲルリン星人は役所の情報だけを鵜呑みにしているようだ。
「わ、わかったわよ。私が無知で悪うございました。で、私にどうしろというの?」
「まずはその橋に跨れ。」
「跨る?」
瑠奈は言われた通りに、川崎からのトンネルから抜け出て航路を跨ぐために盛り上がった上り坂の橋の部分に木更津側を向いて跨いだ。
「跨ったけど一体、何をさせるつもりなの?」
「そのままゆっくりと腰を下ろしていけ」
「腰を下ろす? だ、だめよっ。それじゃ橋が壊れちゃうわ。私にはわざと壊すなんてできない。」
日頃、壊しているくせに、故意に壊す事に瑠奈は良心の痛みを感じていた。
「いいから、ゆっくりと腰をを下ろして橋の上ギリギリのところで腰を止めろ。それなら壊さないからいいだろ。」
「橋の上で腰を止める・・・何でそんなことさせるの? なんか、いやな予感・・・」
瑠奈は前後を見て車が来ないのを確かめてからゆっくりと橋の上まで腰を下ろしていった。
もうこのへんかな
と、腰の動きを止めようとしたその時、
「ん・・・!」
股の感じるところに何かが当たった。道路中央に設置してある中央分離帯のガードレールに当たったのだ。
「ああっ・・・」
ちょっと腰を下げると、ふにゅ。と簡単に潰れてしまった。その感覚が体じゅうに快楽の電流を走らせる。
「あ、ああん・・・」
だめ、壊しちゃいけないわ。で、でも・・・勝手に腰が動いちゃう・・・
 こうなったらもう止まらない、そのまま股間を路面に押し付けて腰を大きく動かし始めた。
「あはああん・・・」
両手で橋の縁を握ってさらに激しく動かしてしまう。橋上の照明灯や標識がなぎ倒され、橋全体が大きな揺れに襲われた。
「はあ、はあ、はあ・・・」
いつの間にやら下半身からはグチュグチュと音がしだした。
 

  川崎から木更津へ向かって80km/hで走行してきた車は9.5kmの長いトンネルを抜け出た。が、上り坂の先に何やら巨大なものが前後に動きながら道をふさいでいる。何だか訳がわからなかったがとっさに急ブレーキを掛けた。間一髪、坂の途中で何とか停まれた。ホッとしたのもつかの間。ズルズルとそのままトンネルの方へ逆走しだした。ブレーキを踏んでみたものの止まらない! そう、瑠奈の水着から滴り流れる粘液混じりの海水に流されていったのだった。そしてトンネル内では後続車との何重もの衝突が起こった。
 一方、快楽に浸っている瑠奈の方はそんな事が起きているとはつゆ知らず。相変わらず腰を動かしていた。
「はああんん」
思わず橋の欄干を握っていた手にぎゅっと力が入ってコンクリートがぼろぼろと崩れていく。
「あはああん、いっちゃう!」
ぎゅっと全身に力が入り、体が反り返った。
ズッドーン!
あまりの気持ちよさに思わず力が入り、橋が耐え切れずに落ちてしまった。
「はあ、はあ、はあ・・・」
「ゲルルルル!いいぞいいぞ!」
 し、しまった! 橋を壊しちゃった。これはゲルリン星人の罠だったんだわ。それにまたハシタナイ事もしちゃったし・・・もうこんな事は止めようと思っていたのに、どうして巨大化するとこうなちゃうんだろう? 普段は清楚なお嬢様学校の生徒なのに巨大化すると性格が変わっちゃうのかしら? これではイメージがますます崩れていちゃうわ。

 ゆっくりと立ち上がって振り返るとトンネル出入口部分にある人工島、海ほたるパーキングエリアにいる小人達がポカーンとこっちを見ている。
でもこの人たち、橋は壊されたし、トンネル内は瑠奈から流れた海水混じりの粘液で通行できない。一体どうやって帰るのだろう?
「ゲルルルル、じゃあ次ぎ行くぞ。いよいよ東京上陸だ!」
「えっ!まだやるの?」
「今のは準備運動。これからが本番。」
「もうヤダ、こんな恥ずかしい事したくない!」
「別に自分で勝手に恥ずかしくしているんだろ。」
た、確かに・・・言われてみればそうだけど・・・
「嫌ならいいんだぞ、人質がどうなっても知らんが・・・」
「わ、わかったわよ。」

 そのまま海の中をざぶざぶと歩かされてレインボーブリッジをくぐり、東京港に着いた。
「ゲルルル。まずはその高層ビルからにしよう。そのビルを破壊してくれ。」
目の前にウォーターフロントの30階建ぐらいのツインのビルが見える。瑠奈は仕方なしに海から上がり、一方のビルの横に立った。
「誰かいませんかー、いたら早く逃げてくださーい!」
そう言いながら丹念に各階を覗いて見て回る。人命優先である以上、一人も犠牲者を出す訳にはいかない。幸い避難してしまったのか人影は見当たらない。
「ゲルル、早くしろ!」
「で、でも、やっぱりそんな事できない。それに壊すってどうやってやるのか分からないし・・・」
今までさんざんビルを壊してきたくせに、いざ故意に壊せと言われてもどうやっていいかわからない。
「それならそのままビルに抱きつけ。」
「抱きつく?」
何でビルに抱きつくんだろう・・・
瑠奈は不思議に思いながら、取りあえず言われた通りにビルに腕を回してそっと抱きついた。
「こ、こう?」
「そう、それで恋人を抱くみたいに強く抱いてみろ。」
「だ、だめよっ!そんな事したらビルが壊れちゃう。それに私、恋人なんていないからどうやって抱いたらいいのか分からないし・・・」
「ゲルルッ! ウルトラヒロインのくせに恋人もおらんのか、くうっ!情けない・・・」
なぜウルトラヒロインに恋人がいないと情けないのか意味不明だが、こう言われてしまっては立場が無い。つい瑠奈は口走ってしまった。
「う、嘘よ。恋人ぐらいいますよ。いつも彼氏にこうやって抱きついてるの。」
そのままぎゅっと力を入れてしまい、瑠奈に抱かれたビルがミシッミシッと音を立て始めた。
「し、しまった。ビルがきしみ始めちゃったわ。このままだと壊れちゃう。」
当然である。またゲルリン星人の罠にかかってしまったのだ。これではいけないと腕の力を緩めようとした。
「・・・・で、でもなんか・・・いけない事しているというのに・・・」
何故だか逆に力が入ってしまう。すでにバストがビルに食い込んでしまい、なんともいえない感覚に陥った。
「あああっ・・・」
水着の生地ごしにビルが破壊されるのがわかる。その感覚を全身で受け止めていると、快感の電流が全身に走る。
「・・・はああっ・・・」
股間が一気に熱くなる。
「もうだめ、はあ・・・あああああん・・・・」
快感のために一気に力を入れてしまい、ビルは瑠奈の腕の中で大音響を立てて粉々になって崩れ落ちていった。
 ああ・・・!!気持ちいい!! 怪獣たちが好んでビルを壊す理由がわかるような気がする。もうだめ、押さえられない!
隣にあったもう一つの高層ビルにさっきと同じように抱き着いた。
「あっ・・・・だめ・・・ああああ・・・!!」
今度はビルの角が股に当たる。股間を強く押さえれば押さえるほど快感が走る。無意識に腰を上下に動かしてしまう。
「はあ、はあ!」
股間を押し当てられた部分から外壁がボロボロと瓦礫となって崩れていった。
「はあああ!いっちゃう!!」
ビクンと体が反り返りって力が入った。腰を押し当てられた部分からビルはポキリと折れて一気に崩れ落ちてしまった。
「はあ、はあ、はあ!」
瑠奈も快楽のためにガクンと膝が折れて崩れ落ちていき、そのまま山となった瓦礫の上に股をこすりつけている。
「はあ、はあ、はあ・・・・・・・・・・はあっ・・・」
満足したのか動きが止まった。
「さ、さすがはウルトラガール・・・乙女座の辺りのウルトラヒロインと違ってやる事が大胆だな・・・ワシは一つだけやれと言ったはずだが・・・。まあいいや、手間が省けた。」
 しまった、またやっちゃった! もお!!どうして私はこうなっちゃうのよっ!
「とにかく約束通りにやったんだから四条さんを返して・・・ん?  ちょ、ちょっと四条さんの顔色が変よ・・・も、もしかして、こ、殺しちゃったの・・・」
「あっ・・・ついついお前の破壊を見ていたら興奮して力が入っちゃって・・・顔を押さえ過ぎたみたいだ・・・」
「バ、バカ!何やってんの。早く四条さんを渡しなさい!」
瑠奈は岸壁から急いで海へ飛び降りてゲルリン星人に向かった。それに対してゲルリン星人は素直に四条靖子を引き渡した。
「ちょ、ちょっと、何で巨大化してるの!」
「お前が見にくいから拡大してやったんだろ。」
「そりゃそうだけど・・・」
瑠奈はてっきりゲルリン星人が虫眼鏡で見せるように拡大して見せていたのだと思っていたのだ。
 これでまた厄介な事になりそうだ。それよりも四条さんを助けなきゃ!
瑠奈はぐったりとして意識の無い四条靖子を抱きかかえて岸壁に寝かせた。
「起きて、起きてよ!四条さん・・・」
いくら体を揺さぶっても反応が無い。
「起きて、起きて、目を覚まして・・・・・・」
呼びかける声がだんだんと涙声になっていった。
「お願い・・・死んじゃだめ・・・・」
瑠奈の目から落ちた涙が四条靖子の頬を濡らしていった。
 私がこんなバカなことをしていたから四条さんを守れなかったんだわ・・・なにがウルトラヒロインよ、クラスメイトさえ助けられなかったんじゃない・・・・・・助けられなかった・・・そうだわ、今から助ければいいのよ! 泣いてる場合じゃないわ。以前、保健の授業で習った人工呼吸の方法なら間に合うかもしれない。
 まず頭を後ろに反らせて気道を確保してから、瑠奈は大きく息を吸い込み四条靖子の鼻をつまんで口に静かに大きく2回、息を吹き込んだ。
それから首の頚動脈のところに人差し指と中指を当ててみる。
「動いてる・・・」
 指に脈拍の動きが感じられる。もうすこしだわ。
授業のときに習った事を思い出しながら無我夢中で人工呼吸を続けた。
・・・お願い、目を覚まして・・・
どれくらい続けただろうか、四条靖子の瞼がゆっくり開いた。
「し、四条さん! 気がついたのね・・・よかった・・・」
再び涙がこぼれてしまう。
「あ・・・月里さん・・・・わたし・・・確か・・・・プールで泳いでて・・・・それから・・・・もしかして私を助けてくれたの・・・・」
うんうんと肯きながら嬉しさのあまり瑠奈は泣いているばかりだった。
「月里さん、ありがとう・・・そんな泣かなくてもいいのよ・・・・・・・あれ?ここはどこ?わたし確かプールで泳いでて・・・なのに何で周りの建物がこんなに小さいの。」
四条靖子はゆっくりと上体を起こし周りを見回している。
しまった!どうしよう!
「ねえ月里さん。これは一体どうなってるの。もしかしてまだ夢の中?  まだ本当は目が覚めてないのかしら?」
「そ、そうよ。ここはまだ夢の中なの。」
よい言い訳を思い付いた。
「でも、つねってみると痛いわよ。」
しまった、自分で頬をつねっている。
「そ、それはおかしいわねえ・・・そうだお互いにつねり合いっこしましょ。」
お互いの両方の頬をつねりあった。もちろん瑠奈は痛い、それでも痛くない顔をして見せて一方で瑠奈はつねったフリをしているだけだ。
「どお?」
「本当だ!痛くない。やっぱり夢なのかしら。」
「そうよ夢の中だもの。もうちょっと力をいれてみましょ。」
バチッ!!
「あっ!」
瑠奈は素早く両手を四条靖子の首筋へ移動し、左右の人差し指をクロスさせ軽く光線を発射させた。四条靖子は瑠奈の胸の中へ倒れ込だ。
「スタンガン作戦、また成功!しばらく寝ててね。」
 こうなった全ての責任はゲルリン星人だ。あのエロ怪獣め!今度こそ一発で倒してやる。と振り返ったが、姿が見えない。
「し、しまった!逃げられたか・・・」
それよりも早く帰らねば
「そうれっ」
四条靖子を背負い飛び上がった。
 
 

 しかし何故だか高度が上がらない。
「わっ!何よこれ、いつもとぜんぜん違うじゃない!わあああっ、落ちる!」
失速して、そのまま再び水しぶきを上げて海に不時着した。
「あっ、だめだ。ぜんぜん飛べない・・・どうしよう・・・これじゃ元に戻れない・・・」
『キュルルルルー』
瑠奈のお腹がなっている。
「そう言えばお昼に何も食べてなかったんだわ。もしかしてエネルギー切れなのかしら。何か食べないとだめなのかな?」
陸地の方に目をやると団地や学校が見える。まずは陸地に上がって四条靖子を埠頭に寝かせ、そちらへ向かった。
 
 

 都心へ30分。埋立地ながらその利便性のため近年住宅地となった地区の中にある中学校。昼休みののんびりした時間帯。海の方から何やら大きな振動が響いてくる。
「地震・・・?」
「ち、違う・・・あれ見て・・・」
教室や校庭で遊んでいた生徒達はいっせいにその方向を見た。
「うわっ!あれって謎の巨大美少女ウルトラガール・・・」
巨大な水着姿の美少女が地面を響かせながらこちらにやってくる。
「で、でも怪獣なんてどこにもいない・・・」
「じゃあ何でこっちに来るの?」
「ほらキュルルルルーって変な音が聞こえる。もしかしてウルトラガールのお腹の鳴る音? と言う事はお腹空いてるんじゃない? こ、これって・・・もしかして俺達食べられちゃうのかも・・・」
校庭にいた生徒達はいっせいに悲鳴を上げながら校舎に逃げた。

「ギャーッ!  た、食べられちゃうの・・・・・」
「助けてー!死にたくない!」
生徒達は机の下に隠れた。窓を覗き込む巨大な美少女を目の当たりにし、校舎内に絶叫が響き渡った。
みな恐怖感でいっぱいだった。しかしそうでない変わった生徒もいた。
「こんな巨大な美少女なら食べられてもいいや・・・・・・」
 

 瑠奈は膝あたりしかない建物の窓をしゃがみ込んで覗いていた。
「何か騒いでるわね。驚かしちゃったみたいでごめんね・・・あっ、男の子が校庭に出て来た。何だろう、なにか喋っている。」
瑠奈は校庭に立つ男子生徒に耳を近づけた。
「ぼ、僕を食べてくれ!」
「!?」
瑠奈は耳を疑った。聞き間違いに違いない。
「なあに、もう一度言って!」
「僕を食べて!」
瑠奈はまだこの生徒の言っている事が信じられない。試しに右手を差し出したらその上に乗って来た。そして顔の高さまで上げてまじまじとみてみる。
「本当に食べちゃっていいの?」
少年は肯いている。
瑠奈は右手をそのまま口の前に持ってきた。
 

 少年は生きた心地がしなかった。しかし何ともいえない興奮の方が勝っていた。巨大な美少女の顔が目の前にある。そして巨大な開いた口が生温かい息を吐きながら近づいてきた、自分でも分からないが興奮の絶頂に達してしまった。確実に死ぬ、それでもこの興奮には勝てない・・・
 

 一瞬気を失ったようだが、尻に何か固い物を感じて気を取り戻した。あの美少女の舌はこんなに硬いのかな?もしかして胃まで落ちてしまったのか?どうせ暗闇だろうから目を開けても仕方が無い。しかし瞼を閉じてても明るい光を感じる。もしかして天国? ゆっくりと目を開けてみた。
目に映ったのは真夏の太陽に逆光となった巨大少女のシルエットだった。
「ここは・・・」
辺りを見渡すと、そこは見慣れた校舎の屋上だった。
「なーんちゃって。私はウルトラガールよ、正義の味方が人なんて食べるわけないじゃない。あっ、こんなことしてる場合じゃないわ!!」
再び教室の中のを目を凝らして見る。
「うーん・・・ところで今何時?」
ここに来た理由はこれだった。何とか見えた教室内の時計は1時10分を指している。
「や、やばい。あと10分で5時限目が始まっちゃう!」
急いでどこかに食べられるものは無いかと辺りを見回した。すると岸壁に停泊中の貨物船が目に入った。
「ちょっとこれ食べさせて! お願い、地球の平和のためよ。協力して!」
 突如として現れた巨大美少女に作業員達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
その貨物船は穀物運搬船。ちょうど小麦の荷揚げ作業中だった。船倉の小麦に手を突っ込み、急いでぱくついた。
「うっ・・・!ちょ、ちょっと、喉に詰りそう。どこか水、水!」
海水を飲む訳にも行かず、立ち上がって周囲を見渡すと銀色に鈍く太陽光を反射して輝いている変わった形の大きな建物が見える。何だろうと近づくととても大きい。高さは私と同じぐらい、そこから海の方向に傾斜になっている。何の建物かしら? もしかして水があるかもしれない。仕方が無いわ、これも地球の平和のためよ。と、斜面中ほどの屋根をメリメリとはがしてみた。
「ひゃっつ、キモチイ。」
冷気が瑠奈の顔を包む。
よく見ると中は一面の銀世界、スキーを滑ってる。屋根を引っぱがしてこちらを覗いてる巨大少女に目を奪われ皆こけている。
「人工スキー場か、ていうことはこの雪は食べられるのかな?」
なんてことを思っているうちにドドドッと大きな音がしてさっきまでの雪が見当たらない。
「あっ、ごめんなさーい。」
30度以上の暑さの外気に触れ、いっぺんに雪が解けて雪崩が起きてしまったようだ。
  そおっと海岸の方へ逃げるとビールの看板のかかった工場が見える。そうだ、ビールを造るには新鮮な水が大量に必要って小学校のときの社会見学で教わったわ。と言う事は飲める水がいっぱいあるに違いない。
とりあえず瑠奈は工場内のひとつのタンクの上部を器用に開けて飲んだ。
「ゴク、ゴク、ゴク・・・はーっ、やっと喉が潤せた!この爽快感・・・・ん?爽快感・・・待てよ、もしかして・・・」
恐る恐るタンクの中を見てみると細かい気泡が見える。しまったこれはビールだ。酔いの回る前に帰らなきゃ、と、四条靖子を背負って飛び上がった。しかし飛び方がどことなく千鳥足状態だ。

***

「四条さん、四条さん。起きて!」
「う、うんん・・・」
「ほら、起きてよ!」
ゆっくりと四条靖子の瞼が開いた。
「ここは・・・どこ・・・」
「なに言ってるの、学校のプールサイドよ。」
ゆっくりと上体を起こしてみると、そこはひとけのない白薔薇女学院高校のプールサイドだった。
「あれ、月里さん。わ、私どうしてたんだろう・・・」
「プールで溺れたのよ。」
「そ、そうだ、思い出した。私、泳いでて急に何かに水中に引き込まれそうになって・・・そこから記憶が・・・それで私を助けてくれたの?」
「そうよ、水泳部のあなたが溺れるんだもの、びっくりしちゃったわ。」
「ありがとう。あっ、それでね月里さん、お願いがあるんだけど・・・」
「えっ、お願い?」
「私の頬をつねって」
「つねる? あ、いいわよ。」
瑠奈は思いっきりつねってやった。
「痛ーいっ、やっぱり夢じゃないわ。」
「え?」
「実はね、目が覚めるまで変な夢を見てたの。夢の中でも月里さんが私を助けてくれて、お互い頬のつねり合いっこしたの。夢の中だから痛くないってね。ほんと変な夢でしょ。そうそう、変な夢といえば周りの建物がみんな小さくて・・・・」
やばい、やっぱり憶えてたか
「ホ、ホントに変な夢ね。ほら、もうすぐ5時限目が始まるわ、急ぎましょ。」
 
 

「瑠奈ちゃん!どこ行ってたの?」
更衣室からダッシュで教室に駆け込むと菜穂ちゃんが話しかけてきた。
「あっ、四条さんとプールで泳いでたの。ね、ね、四条さん?」
「そう、私が溺れていたところを助けてくれたのよ。」
「へーっ!すごい!・・・それにしても瑠奈ちゃん顔真っ赤よ、どうしたの?」
顔が真っ赤?・・・もしかして酔いが回ってきたの? こういうのは全て変身を解いたあとにクリアされるんじゃなかったの?  第1話で説明を受けたときは確か『巨大化したとき受けたダメージは、変身を解いたときにすべてクリアされる』だったわね。と言う事はこの程度の酔いはダメージとはみなされないのでクリアされないのかしら、そう言えばお腹の方も麦で満腹で苦しいわ。
「瑠奈ちゃん、瑠奈ちゃん!」
「な、なあに菜穂ちゃん。」
「なにボーッとしてるの?  何か変よ。何か隠し事してるっ!」
「か、隠し事なんてないって!」
や、やばい!菜穂ちゃんが寄ってきた。
「うわっ、お酒くさーい!もしかしてプールで飲んでたの?」
「えっ、お、お酒なんて飲んでないわよ!」
「じゃあ何でこんなニオイがするのよ?」
「そ、それは・・・そ、そうそう!今日のお弁当に奈良漬が入っていたんでそれで酒臭いのよ。それに顔はプールサイドで食べたんで日焼けしたんだわ。今日こんなに好い天気だし・・・」
「それもそうよねえ。瑠奈ちゃんがそんな事するわけ無いもんね。」
「そうよ、そんな事しないわよ。あっ、先生が来たわ。」
ふうっ、あぶないところだった・・・
 
 

「月里さん」
誰かが私を呼んでいる。今度は一体何なの?
「つ・き・さ・と・る・な・さん」
その声が段々こちらに近づいてくる。・・・ん? あっ、し、しまった!
「はっ、ハイ!」
瑠奈は急いで立ち上がった、と同時に教室内で爆笑が起こった。
「月里さん。授業中はちゃんと聴いててください。」
「は、はあい。ゴメンナサイ・・・」
5時限目の英語の授業中。瑠奈は酔いと疲労で爆睡してしまい先生に怒られてしまったのだ。

 あー、恥ずかしい!  こうなったのもエロ怪獣ゲルリン星人のせいだ。今度見つけたら叩きのめしてやる!

 ゲルリン星人に対し闘志のわく瑠奈であった。

7.『ウォーターフロント』
−終−

inserted by FC2 system