ウルトラガール
6.『KIX』


「瑠奈ちゃん!大丈夫?」
 夕方、瑠奈は変身を解いて、ふらふらになって須磨浦海岸に帰ってきた。ビキニのブラはちゃんと元に戻っている。
「あ、陽子ちゃん。心配かけてゴメン。」
まさか「ウルトラヒロインなの」とは言えないし、ましてや瀬戸大橋であんなことしてたなんてもっと言えないから
「海で溺れて、そこから記憶が無いの。気付いたらあっちの方の砂浜に流れ着いてたの。」
「ケガは?」
「大丈夫よ、ただ疲れちゃって・・・早く帰りましょ。」
「それなら良かった。ところで忘れ物ってなんやったん?」
「忘れ物?」
「そうよ、忘れ物があるって言って海に入って行ったやんか?」
そうだった、とっさに付いた嘘の事をすっかり忘れてた。
「えーっと・・・何を忘れたか忘れちゃった。」
「はははは、相変わらずドジやなあ。ところで瑠奈ちゃん何ともなかったん?」
「だからケガも無いし、何とも無いわ。」
「違うわよ、ケガじゃなくって怪獣。」
ぎくっ・・・
「わ、わたし怪獣なんて知らないわよ。」
「だって・・・海からタコみたいなのが出てきて、それで瑠奈ちゃん海の中に入って行って・・・あれ?それから怪獣どうしたんだっけ?」
ふうっ、それ以上は憶えてないようね。
 着替えをして夕食もそこそこに、陽子ちゃんの家で早く寝てしまった。

***

「瑠奈ちゃん、起きて!起きて!」
「ん・・・なあに? 今何時?」
「6時よ。」
「お願い・・・もうちょっと寝かせて・・・」
「寝ている場合じゃないわよ。昨日の怪獣が新聞に載ってるわよ。」
「えっ!」
陽子の差し出した新聞を見ると、昨日、垂水から見た明石海峡大橋の写真が載っていた。橋の上には大ダコが、そしてその向こうにはビキニ姿で巨大化した私がその部分だけぼやけて写っていた。
「あの怪獣、謎の巨大美少女ウルトラガールが退治してくれたんやわ! そう言えば須磨浦海岸で目の前にウルトラガールが現れたような気がするんやけど・・・」
なんかヤバイ感じ・・・でもカモフラージュが効いているはずだから大丈夫よね。こういう時は堂々としてたほうがいいわ。
「へーっ、陽子ちゃん凄いわね。ウルトラガールに会ったんだ。やっぱり美人だった?」
「美人というか・・・そういえばどこかで見た事ある感じやったなあ。」
ヤバイ!!調子に乗って変な事聞くんじゃなかった。急いで話を変えないと。
「そ、そんなことより今日。どこ行っか?」
「今日は明石海峡大橋を見に行こうと思っとったのに。残念やね、怪獣に壊されちゃって・・・」
それは怪獣じゃなくって、私がドジって壊しちゃったのよ。
「そんな事いいわよ、十分見たから。」
「え?」
「い、いや、きのう須磨浦海岸から十分見たじゃない。」
「そお、でもそばで見るとめっちゃ大きいわよ。」
うわっ、危ないとこだった。
「ねえ、ところでこの写真、何に見える?」
「ん?」
「ほらこれ、ウルトラガールは何してるんやろ?」
ゲッ!
「さ、さあ・・・。ご、ごめん、なんかまた眠くなっちゃった。もう少し寝かせて。」
瑠奈は布団の中にもぐり込んだ。
その写真は、ぼやけて写っている瑠奈が岩黒島橋に跨いでいる写真だった。

***

 そんなこんなで旅行最終日。梅田や難波で遊んでから昼過ぎ、電車で関西空港にやってきた。
「うわあっ、きれいな空港ね。」
関西空港駅の改札口を出て、左に曲がりターミナルコンコースを抜けるとキャニオンと呼ばれる空港メインターミナルの吹き抜け空間に出る。高さ28mのガラスでできた天井からは眩しいほどの日光が降り注ぐ。そのまま真っ直ぐ進み、旅客ターミナルビルの2階、国内線出発ロビーに着いた。
「陽子ちゃん、いろいろとありがとう。今度は東京に遊びに来てね。」
「うん、必ず行くわ。」
「それじゃ、さようなら。元気でね。」
チェックインを済ませ。瑠奈はここで手を振りながら陽子と別れた。

飛行機の座席に座り窓の外を見る。
「1時間もすれば羽田ね。」
シートポケットからヘッドホンを取り出しミュージックサービスを聴き始めた。
「ふぁ〜あ、なんか眠くなってきちゃった。」
今日一日ウインドショッピングで歩き続けた疲れで眠気が襲ってきた。
 飛行機がゲートを離れ、ゆっくりと滑走路に向かった。滑走路に入り、ふわっと浮き上がった。
「離陸したのね。」
瑠奈はミュージックサービスを聞きながら夢見ごこちだった。
しかし上昇の仕方が変だ。まるでエレベーターに乗っているようだ。
「うっ、何これ。こんな急に上昇したら気持ち悪いじゃない!こんな離陸の仕方ってあるの?」
上昇が終ると、次はひどい揺れが襲ってきた。
「な、な、何よこれ!うえっ・・・」
機内には悲鳴が響きパニック状態だ。これはおかしい。とっさに窓の外を見た。
「か、怪獣!」
怪獣が飛行機を持ち上げてるでわないか!
「わーっ、なんでこんな時に怪獣なんて出るのよ。どうして携帯が鳴らないの!」
携帯を取り出して気付いた、機内では携帯電話の使用が禁止されているから搭乗前に電源を切っておいたんだ。
 とにかく変身しなくてはならないが機内では他の乗客を巻き添えてしまう、とにかくここから出なくてはならない。
「あっ、ちょっとすいません。」
シートベルトを外し席を立って、蒼い顔の隣の席の人に会釈してまずは通路に出た。揺れる機内をシートに掴まりながらようやくドアの前に辿り着いた。
「お客様危険です。お席の方へお戻りください。」
 ドアの横でシートベルトをして座っていたスチュワーデスが立ち上がった。
瑠奈は無視してドアの大きな回転ノブを左に回して開けようとした。
「お客様!おやめください。何をするのですか!」
「お願い。ここから出して!」
「ここは上空です。非常口は着陸した時に乗務員が操作いたしますので、指示があるまでお席の方にお戻りください。」
「緊急事態なの! 私が行かなくてはならないの!」
「危険ですからお席の方へ・・・きゃーっ!」
ノブにしがみ付いていた瑠奈をスチュワーデスが引き離そうとしたその時、機体が大きく傾いた。何も掴んでいなかったスチュワーデスは反対方向に転がっていった。
「今のうち!」
OPENと表示のある位置までノブを回転させドアを押し開けると、非常用の脱出シュートが一気に空気で膨らみ飛び出した。
「さて行くわよ!」
携帯の電源を入れ、脱出シュートを滑り降りた。滑り降りた先は空中である。

***

 フリーフォールのときには、さすがに失神しそうになったけど何とか間に合ったみたいだ。足が地に付いた。
「ううっ、でも気持ち悪りい・・・」
瑠奈もさっきの揺れで酔っている。
「でもだめ。巨大化して吐いたら大変な事になるわ。ここは我慢しないと・・・それよりまずは飛行機を取り返さなきゃ。」
咽の当たりに酸っぱいものを感じつつ、目の前の怪獣から飛行機を奪い取ろうとした。
「ちょっと、返しなさいよ!」
無理に引っ張ると飛行機が空中分解しそうだ。
「これじゃ無理だわ。うーん、そうだ!これでもくらえ!」
瑠奈は腹蹴りを一発お見舞いしてやった。さすがの怪獣も腹を押さえて苦しがってる。その隙に飛行機を奪い取った。
「まずは成功ね。どこか安全な所に置かなきゃ。あそこなら大丈夫そうね。」
瑠奈が向かったのは空港島から対岸の泉佐野へ伸びている連絡橋だ。その上に飛行機を置いて戻ろうと振り向いたとき、
「きゃっ!」
いつのまにかやって来た怪獣にパンチを食らい、連絡橋に倒れそうになった。
「わっ、わああああっ!」
バランスを失った。振り向くと当然ながら連絡橋の上に先ほど置いた飛行機が見える。
「ここで倒れたら前回と同じパターンだわ。第一、せっかく守った乗客を犠牲にしてしまう。」
今度ばかりは絶対に倒れる事はできない。何とか後ろに倒れるのだけは避ける事ができた。が、
ドッポーン!!
海に落ちてしまった。
「あうう、溺れる・・・!」
前回の明石海峡の悪夢がよみがえる。必死でもがいたが何のことはない。水深は18m、膝下ぐらいしかない。
「はあ・・・何だ、驚いて損したわ。」
幼児プールで後ろに手を付いて座っているような格好になった。
 はっ、と怪獣の方を見るといつのまにか旅客ターミナルビルの目の前にいる。あそこにはまだ陽子ちゃんがいるはず、あっダメ!潰されちゃう!
急いで立ち上がり手をクロスさせたが、果たしてこんなに早く光線が出るのであろうか!
「お願い!出て。」
めいいっぱい力を入れたが、やっぱり出なかった。まだロックが掛かっていたのだ。瑠奈は空港島に駆け上がり怪獣に向かおうとした。が、もう間に合わない。
「やめてーっ!」
怪獣がターミナルビルに足を振り下ろそうとしたその時、消えた。不思議な事に怪獣が消えたのだ。瑠奈の悲痛な叫びが届いたのか。
「えっ、どうなっているの?」
なぜ消えたのか理解できなかったが安堵感のため、その場でガクッと座り込んでしまった。
「でもよかった・・・心臓が止まるかと思った・・・」

 その時、空から聞いた事のある笑い声が聞こえた。
「むははは、なかなか手の込んだシチュエーションだろう、楽しんでもらえたかな。むははは。」
「こ、この声はマニピュレート星人。」
空を見ると、いつのまにか円盤が現れていた。
「ウルトラガール、君に用があるのだ。新開発のバーチャル怪獣はどうだったかな。これ位しないと君は現れてくれないからね。」
「楽しんでもらえたかって? まったく、ふざけるのもいい加減にしなさいよ。何よ、こないだやっつけたのにまだ懲りずに侵略しに来たわけ! あんたなんてまた一発で倒してやるわよ。」
「いや、今日は侵略に来たのではない。ところで夏休みの宿題は終わったかな?」
「まだだけど・・・。ちょ、ちょっと。そんな事あなたになんか言われたくないわよ。」
「そうか、宿題は早く終わらせた方がいいぞ。何を隠そう私もまだでな、残っているのが美術だ。自由課題なのでインパクトのある作品のほうがポイント高いだろう。そこで君にモデルになってもらいたいのだ。」
「はあ?」
あまりのアホらしさに、瑠奈は呆然となった。
「あんた何言ってるの。私は忙しいの、侵略じゃなかったら帰らしてもらうわ。」
瑠奈は両手を挙げて飛んで帰ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。その美貌、豊かな胸と引き締まったウエストライン、脚線美。是非その美しい姿を描きたいのだ。」
「えっ!そ、そうかしら?」
「そうだとも、その美しさは全宇宙では噂で持ちきりだぞ。」
「そんなあ。」
「少女のあどけなさを持ち、それでいて大人の女を感じさせる。まさに全宇宙のアイドルだぞ。」
瑠奈の心が動かされた。
「それなら、まあ考えてもいいけど・・・人に頼みごとする時には丁寧に言うものよ。」
「このとうり、お願いします。」
「もっと丁寧に!」
「は、ははあ。ウルトラガール様、是非ともお願い致します。」
おだてると瑠奈は調子に乗りだした。まあ承諾させちゃえばこっちのもんだけど。
「まあいいわ、少しの時間ぐらいなら。これから東京に帰らなきゃならないの。早くしてね。」
「は、承知致しました。ウルトラガール様。」
「ところで美貌とかはわかるけど、ウエストラインはどうしてわかったの?服を着ているのに。」
「それは服が張り付いているからな。」
「えーっ!」
見ると濡れたサマードレスが張り付いて体のラインがきっちり出ている。ブラとパンティーがはっきりと透けて見える。
「いやーん、はずかしーい!」
さっき海に落ちた事をすっかり忘れていたのだ。
「そのまんまでもいいけど脱いだ方がいいぞ。風邪ひくからな。」
「い、いやよ。やっぱりやめた。私、帰る。」
「そうはいかない、承諾しちゃったんだからな。」
マニピュレート星人がそう言うと瑠奈は服を脱ぎだした。
「ど、どうして体が勝手に動いちゃうの!」
瀬戸大橋の時も体が勝手に動いたが、今度は本当に体が勝手に動いてしまう。
「むはははは、操らせてもらった。」
しまった、マニピュレート星人の罠にはまってしまった。瑠奈も先代同様に騙されやすかったのだ。
そうこうするうちに滑走路上でサマードレスを脱いでしまった。
「下着姿もなんだし、もっと脱がせよう。」
「いやよっ!」
そう言いながらブラのフォックをはずして、ぽーんと投げ捨てた。その巨大なブラは空港島で一番高い建物、高さ86mの管制塔に引っ掛かった。双眼鏡を覗いていた管制官たちはさぞがっかりしただろう。
「もうやめて! これだけ大勢の人がいるところで下半身まで脱ぐのはいけないわ。きゃーっ!そこだけはやめてーっ!」
きゃーきゃー言いながらパンティーに手を掛け脱いでしまった。脱ぎ方に不自然さが無いので自分の意志で脱いでいるとしか見えない。脱いだパンティーは丸めて投げて旅客ターミナルビルの屋上、ちょうどキャニオンの所にかぶさった。吹き抜け空間から見上げた人たちはガラスの天井にかぶさった巨大なパンティーを目撃する事となった。
「さて始めるか。やっぱり人物画はヌードに限る。題は『空港に佇む巨大美少女』。うーん絵になるねえ。」
「きやーっ、は、恥ずかしーっ!! もおっ、帰してよっ!!」
胸と股を手で隠したいのだけれど操られているので手が動かない。全裸のまま空港島の真ん中で仁王立ちにされてしまった。
 この後、広大な空港で瑠奈はさまざまなポーズを取らされる事になった。詳しくは読者の皆様の想像にお任せします。

***

それからしばらくして、
「なんかこう、もの足りんな。何かアクセサリーはと、そうだ。」
マニピュレート星人が言うと瑠奈は操られて67番スポットに駐機中のA320を持ち上げた。
「なかなかいい構図だ。」
「ちょっとまだなの。」
飛行機のおかげでちょうど胸と股のところが上手い具合に隠れるので手ぶらでいるよりはいいのだが持ち続けるのはつらい。
「うーん、もっと大きいほうがいいな。」
A320を置いて、今度は8番スポットに駐機中のB747−400に手を伸ばした。
「ちょっとこれ、大きいわよ。」
 B747−400は長さ70m、幅64m、高さ19m。長さで言えば瑠奈の身長より10m短いぐらい。乗客はすでに逃げ出していたが、アメリカまでの長距離フライトに備え燃料、貨物とも満杯で300tは超えている。これだけ大きく重いので中々持ちにくい。瑠奈は操られて飛行機の後ろに回り、主翼のつけねに両手を当てて屈んで持とうとした。
「ちょっとこれ重いわ・・・あ、ああ!」
持ち上げた時、垂直尾翼が瀬戸大橋のケーブル同様に瑠奈の股の感じるところに当たってしまい、思わず喘ぎ声を上げてしまった。
「おっ、そうだ。」
それを聞いたマニピュレート星人は何かひらめいたようである。
「ちょっと、何するの。」
腕が勝手に飛行機を持ち替えて、機首を瑠奈の方に向け始めて股の方に進み始めた。
「飛行機に巨大娘ときたら決まっているだろ。」
「ちょ、ちょっと待って!飛行機をあそこに向ける・・・それってもしかして、わーっやめてえ! これだけ大勢の人がいる空港でそんな事するのはいけないわ。それにこんなの宿題に出す気? 結局あなたも風紀上問題なんじゃないのよ。」
「これは我が輩のHPの画像にするのだ。それに皆期待しているようだしな。」
旅客ターミナルの方を見るとガラス越しに人だかりがしているのが見える。
カモフラージュが効いているからすぐ忘れちゃうんだろうけど・・・それにしてもその中にはそんなもの効いていないって感じな人が数人いるような気がするのだけれど・・・
「それにどっちが風紀上問題なんだ。知ってるぞ瀬戸大橋の事。」
ぎくっ
「せ、瀬戸大橋。な、何の事かしら・・・」
「呆けても無駄だぞ! ウルトラガールといえ、すぐに探せないからな。しばらく前から偵察機を出してたのだ。」
見られていた。
「あ、あれは勝手に体が動いてしまって気が付いたらあんなハシタナイことしてしまって・・・いくら夏休みで気分が浮かれていたとはいえやり過ぎたわ、反省してます。あなたも宿題の分は済んだんだからいいでしょ、帰らせてよ。第一こんな太いの無理よ。わかったでしょ、だから帰らせて!」
「そんな事言って、いつも電動歯ブラシの柄なんかでやっているんだろう。でもまあ確かに太いな、それじゃもっと細いを方と。」
瑠奈はB747−400を置いて、操られて先ほどのA320に手を伸ばし股にあてた。
「これで入るだろう。」
「きゃあーっ、無理よ!やめて!帰らせてよ!」
「残念、ちょっと無理だな」
また操られ今度は別の方向に歩き出した。
「飛行機を入れるなんて所詮無理よ。これで諦めたわね。」
旅客ターミナルビルから離れた芝生にペタンと座らされた。
「ちょっと、こんなところに座らせてどうするの?」
目の前を見ると、そこには瑠奈の脱いだサマードレスが滑走路を占領しているために離陸できずに待っている飛行機がずらっと並んでいる。その中の小型のB737を掴まされた。
「ちょ、ちょっとやめてよ。まさか本気で・・・」
「むははは、その通り。」
ど、どうしよう!これならもしかして入っちゃうかも・・・
こんな所で一人エッチをする訳にはいかない。しかし瑠奈の体は操られるまま両主翼を掴んだ。
「わー、やめて!やめてえ〜!!・・・・・」
機首を股に挿入させられた。ずぶずぶと瑠奈の体内に入っていく。
「あ、ああ、あああああああ!」
いくら操られているとはいえ、ウルトラヒロインがこんな事するのはいけない。でも体験してしまってはもう止まらない。
「あああ、あはあ〜ん!」
ぐちゅんぐちゅんと音を立てながら飛行機は巨大な穴に出入りを繰り返し、その度に機体が粘液に包まれていった。
「す、凄い、あ、あはあん!」
「これはいいわい。でも腰の動きは操ってないぞ。」
マニピュレート星人の言った事など、ヒートしてしまった瑠奈の耳には届いていない。
 それにしてもこの飛行機は離陸待ち。すなわち乗客乗員が乗っているのである。コックピットではさぞすごい風景であろう。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!ん??」
 瑠奈が快楽に浸っているうちになんか変だ、お尻の辺りが冷たい。濡らしちゃったのかしら。周りを見渡すと空港島全体が湿地のように水浸しだ。
 ただでさえ地盤沈下の激しい人工島に巨大娘が動き回り、振動させてしまったので液状化現象が起きてしまったようだ。腰の動きが特に効いたようだ。
 我に帰った瑠奈は飛行機をその場に置き、下着を着けサマードレスを急いで着た。
「ごめんなさい、悪いのはマニピュレート星人なんです。」
と言って周りを見たが円盤なんてどこにも見当たらない。いつのまに帰っちゃったのかしら。ということは途中からはマニピュレート星人の操りではなく私の体が勝手に動いちゃったというわけ、うわっ!そう考えると恥ずかしくてたまらない。急いで飛んで帰った。

***

 ターミナルビルに戻ると人の波だ、飛行機が飛ばないし第一、島が沈みかけている。パニック状態だ。
これからどうしようかと、さっきの旅客ターミナルビルの2階、国内線出発ロビーに戻ってきた。
「瑠奈ちゃーん!」
後ろから声をかけられた。
「あっ陽子ちゃん、まだいたの。」
まだいたってことは、もしかしてあのシーンも見てたってこと!!
カモフラージュが効いているとはいえ、そう思うと今にも気絶しそうだ。
「それが帰ろうと電車に乗って発車を待っとったら、地震にしては変な揺れが長く続いて雨なんか降ってへんのに急に洪水みたいになっちゃって運休になったの。線路はもう水浸しよ。ところで瑠奈ちゃんの飛行機は?」
「あーっ。わ、わ、私の方も運休みたいね。とにかくここから出ないと沈んでるみたいよ。バスなら大丈夫でしょ。」
ホッ、駅にいたなら私の事、見てなかったはずよね。
「それがなぜだか連絡橋の上に飛行機がとまっとって、車は全て通れへんみたいよ。」
「飛行機!なんでそんなところに・・・」
そこに置いたのは私だったんだわ。
「そ、それじゃ、とにかく歩きましょ。」
 道路上には水溜まり程度で何とか歩ける。とぼとぼと歩くと連絡橋上に飛行機が見えた。近くで見るとやはり大きい。前輪が泉佐野方面、後輪が空港方面への道路に跨って横たわっている。これじゃ車は通れないわね、もっとも私が置いたんだけど。
ここで気付いた、荷物は機内に置いたままだ。お金もバックの中。持っているのは携帯電話だけだ。
「陽子ちゃん、ちょと待ってて。」
そう言うと瑠奈は飛行機に向かった。全てのドアからは脱出シュートが下り、乗員乗客は全員脱出した後だった。
脱出シュートを滑りながらも何とか登り終え機内に入った。確かこの辺と荷物棚を開けると
「あった!」
自分のバックを持ってスルスルーッと脱出シートを降りた。
「お待たせ、行きましょ。」
「あれ瑠奈ちゃん、何でこの飛行機にバックが置いてあるん?」
「な、何でって、そ、そう、私、一度この飛行機に乗ったんだけど虫の知らせというか第六感で急に降りたくなって荷物をそのままで降りちゃったの。ほら、だからこんなところに不時着しちゃったじゃない。」
どう考えてもこんな器用な不時着の仕方はない。
「へーっ、瑠奈ちゃんて予知能力があるんや。すごいわぁ!」
「たまたまよ、たまたま。私だってこんな事初めてだわ。」
「だって須磨浦海岸でも私に逃げてって言ってから、大ダコが出たやんか。やっぱり予知能力があるんよ。」
忘れてた。ますますやばい状況になってきた。
「あの時もまぐれよ、ちょうど恐い夢みてたから寝ぼけてただけよ。」
何とか言い訳できた。嘘をついて隠し通すのも楽じゃないわ。
全長3750mの連絡橋を渡り終えて、りんくうタウン駅に着いた。ここも運休みたいだ。結局、次の泉佐野駅まで歩かされることとなった。もう周りはすっかり暗くなってきた。
 泉佐野から難波で地下鉄に乗り換え、新大阪にやっと着いた。結局、行きと同じく新幹線だわ。
「こんな遠くまで送りに来てくれて、ありがとう。」
こうなったのも、自分のせいだ。陽子ちゃんに本当に申し訳ない。でも本当の理由は言えない。
「ううん、ええんよそんな事。瑠奈ちゃんと長く居れたし、それにここからなら新快速で三ノ宮まで30分ぐらいやろ。大阪で大勢降りるから座れるし、ちょうどよかったわよ。」
それを聞いて少し気が楽になった。
「今度こそ本当にお別れね。陽子ちゃん、本当にいろいろとありがとう。今度は東京に遊びに来てね。」
「うん、必ず行くわ。」
「それじゃ、さようなら。元気でね。」
発車ベルが鳴り終わりドアが閉まった。お互い手を振り続ける。なんか感動的なフィナーレだわ、シンデレラエクスプレスみたい。もっとも恋人同士じゃないけど。

6.『KIX』
−終−





えっ? 本来ならここで終わってもいいはずなのにまだ終わらないの? まだ何かあるのね。新幹線が怪獣に襲われるとか? もう勘弁して、くたくたなんだから。何が起きても変身しないからね。
そうこう考えているうちに、いっぺんに疲れが襲ってきて深い眠りに落ちた。

「もしもし、お客さん。終点ですよ。」
もう終点! 京都も名古屋も止まったのに気付かなかったわ。もしかして逆方向に乗っちゃって博多だったりして・・・。これで最後にちゃんちゃん。てオチとなるのね。
車内の電光表示板は〔東京 Tokyo〕となっている。ホームに降りるとその通り東京だった。
「おかしいわねえ。」

 家への最寄り駅に着いた。何も起こらなかった。
「わかった! 帰り道で痴漢に襲われるんだわ。いや、痴漢じゃなくてエイリアンよ。卵を産み付けられて『次回に続く』ってなるのね。ちょ、ちょっと待ってよ、それじゃ私、寄生されて死んじゃうじゃないの!」
それは別のウルトラヒロイン小説の読みすぎだぞ。

 エイリアンに襲われるんじゃないかと、びくびくしながら何事もなく家に着いた。ドアには鍵がかかり窓には明かりがない。
「わかった!家族全員がエイリアンに襲われちゃったんだわ。」
鍵を開けて、そーっと家の中に入った。でも何ともない。寝息が聞こえてくる。
「なんだ、とっとと寝ちゃったのね。年頃の娘が夜遅く帰ってくるって言うのに、信じられないわ。」
もっとも新大阪駅で『これから新幹線に乗るから遅くなる』とは一応電話しておいたんだけど。

 結局、何も起こらずにベットにたどり着いた。あとは寝るだけだ
「わかった!寝てる最中に小人の宇宙人、そう!シュリンカー星人とかいうのに襲われるんだ。今夜は寝ないでおこう。踏み潰してやるんだから。」
でも睡魔には勝てない。寝てしまった。

***

「瑠奈・・・瑠奈・・・。」
で、出たわねシュリンカー星人!
「瑠奈、起きなさい。」
どこかで聞いた事のある声だ。
「お、お母さん!」
瑠奈は飛び起きた。もう朝だ。
「あなたが新聞に載っているわよ!」
「えっ!?わ、私が・・・」
母親が新聞を持って立っている。その新聞の一面には『関西空港 水没』の見出しが見える。
 あっ、つ、ついに私の秘密がばれてしまった!あ、あ〜っ、月里瑠奈。一生の不覚。ど、どうしよう・・・・・。ただでさえバレたらまずいのに、昨日の事はとてもじゃないけどウルトラヒロインらしからぬ事だわ。
瑠奈はいきなり地獄に突き落とされた。
「ほら、ここに載ってるわよ。」
母親が紙面を指差した。瑠奈は見ちゃいない。
「お、お母さん・・・い、今まで黙ってて・・・ご、ごめんなさい・・・、わ、わたし・・・じ・実は、ウ・ウル・・・」
話そうとしても、うまく言葉が出ないので蚊の鳴くような声しか出ない。幸か不幸か母親は聞いちゃいない。
「ほらここに『行方不明者 1名 ツキサト ルナ』ってあるわよ。」
「!?」
すぐには理解できなかったが急いでその紙面を見た。
そこには『行方不明者1名 ・・・』とあり、その下に不時着した144便から1人の少女が飛び降りたという証言があり乗客名簿から『ツキサト ルナ』が判明し、未だに遺体が見つからないという事だ。
144便といえば私が乗った羽田行きの飛行機だわ。ということはこれは私の事だ。
「それでさっき警察から『お宅の娘さんじゃないか』って電話があってね。」
「それで・・・」
「『娘なら家で寝てます』て答えたわよ。でも昨日は関西空港から飛行機に乗るはずじゃなかったの、144便に?」
「そ、そうだけど。それがチェックインしたんだけど乗り遅れちゃって。」
「それじゃ何かの間違いね。まあいいわ、後で電話しておくから。」

 それからこっそり一人でテレビを見てみると、あの時のスチュワーデスが頭の包帯も痛々しく映っていた。
『そのお客様を引き止めたのですが「緊急事態なの!私が行かなくてはならないの!」って言い残して飛び降りていったんです。引き止めようとした時に激しく機体が揺れて彼女を止められませんでした。気付いた時には不時着していて、いまだにその言葉が何を意味するのか、彼女が私たちを助けてくれたみたいで・・・不思議な感じです。』
画面が変わり、まだ連絡橋の上に止まっているB767が映った。
「あぶない、あぶない。下手なこと言うと私の秘密がばれちゃうわね。今度から注意しないと。」
次に映ったのはパイロットだった。
『何かに掴まれて持ち上げられ、その後すごい振動が襲ってきました。それから暗い所に入ったような気がするのですがよく憶えてないんです・・・。あっ、失礼。』
そう言うと鼻から血を出している。
次にそのパイロットが乗っていた別の飛行機が映し出された。
瑠奈はどこかで見たようなと思ったが、思い出した。
そこには機首部分がヌメるような液体で濡れたB737が映し出されていた。
「あわわわっ!」
急いでテレビを消した。

うーん、さすがにここまで引きずった事はあるわね。最後は本当に心臓が止まるかと思ったわ。
これで本当に終わりね。

6.『KIX』
−終−

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