ウルトラガール
5.『SUMMER STAGE』

〔次は新神戸 あと15km〕
ドア上のディスプレーに表示された。
「このトンネルを抜ければ新神戸ね。陽子ちゃん待っているかしら。」
小学生の時、神戸に3年間住んでいた瑠奈は、夏休みを利用してその時の親友、西田陽子に会いに行くところであった。

「瑠奈ちゃん!」
新神戸駅改札口に西田陽子の姿を見つけ、互いに手を振り合った。
「あっ!いたいた。陽子ちゃん、久しぶり!」

 2人は会話を弾ませながら北野町へ向かった。
「うわーっ」
異人館のバルコニーからは神戸の街が見下ろせ、その向こうには港が望める。エキゾチックな雰囲気がたっぷりと感じられる。
「やっぱりええわあ、神戸わ。」
急に陽子ちゃんがクスクスと笑い出した。
「どうしたの?」
「なんで瑠奈ちゃん。急に関西弁になるん?」
「そ、そう言われればなんでやろ。意識せんのに自然とでてしまうわ」
「ほらまた・・・」
普段、東京に住んでいる時には関西弁なんて使わないのに自然と出てしまう・・・自分でも不思議だ。
 それから北野坂を下って。三宮、元町、ハーバーランドでショッピングをし、最後に瑠奈が一番お気に入りの場所、須磨離宮公園に向かった。園内に入るとヨーロッパの宮殿をイメージした庭園が広がる。美しい芝生と花壇の中央には大噴水が一列に並び、その向こうには瀬戸内海を借景として眺めることができる。
「やっぱりここの風景が一番だわ。前は瀬戸内海、後ろは山。東京にはこんないいところ無いから。」
夕方の海からの風が心地よい。
「ところで橋はどこにあるの?見当たらないわね。」
「橋?あ、明石海峡大橋の事ね。それやったらもっと向こうよ。須磨浦海岸からなら見えるわ。」
「須磨浦海岸。懐かしい!むかし泳ぎに行ったわね。そうだ明日泳ぎにいきましょ。」
「でも瑠奈ちゃん、水着はあるん?」
「無いけど・・・これから三宮に買いに行きましょ。」
「えっ、また三宮に行くん・・・」
「いいじゃないの、買い物が済んだら陽子ちゃんの好きなカラオケにでも行きましょ。」
「うん、それなら行こ行こ!」

***

「どお、陽子ちゃん。やっぱり大胆だったかしら?」
「そんなことないわ、瑠奈ちゃんスタイルええから似合ってるわよ。」
瑠奈はビキニの水着姿である。まあ自分でも自信があったからビキニを選んだのだが、
「そお、ありがと。それじゃあ泳ぎましょ。」
更衣室を飛び出し砂浜を駆け出した。今日も暑い。東京の暑さと違う関西独特の蒸し暑さだ。
「きゃっ!きもちいっ」
2人は大急ぎで海に飛び込んだ。

 泳いだ後で昼食をとった2人は甲羅干しで砂浜に寝転んだ。ウトウトしていると、やたら男が声をかけてくる。
「なんで、こう男が寄ってくるの?ナンパ目当てばっかりね。」
「それは瑠奈ちゃん、ビキニの効果が出てるんよ。」
「もお、これじゃゆっくり居られないわ。あっちの空いているところへ行きましょ。」
2人は西の方の海岸に向かった。
「ここなら人が少ないし、ゆっくりできるわ。」
再び砂浜に寝転がった。
「ふぁーあ・・・」
お腹もいっぱいだし眠くなってきた。昨夜泊めてもらった陽子ちゃんの家で遅くまで2人で喋り続けていたからなおさらだ。そんな訳でとうとう熟睡してしまった。

「瑠奈ちゃん・・・」
今度は何?気持ちよく寝ているところなのに・・・
「瑠奈ちゃん、瑠奈ちゃん。起きてよ!」
「はあ、ふぁああ〜。」
陽子が瑠奈を揺すって起こした。
「瑠奈ちゃんの携帯が鳴ってるわよ。」
「ふぁあ〜あ、ありがと。」
瑠奈は眠気眼で、傍らに置いてあったバックから無造作に携帯を取り出した。
「ふぁい、もひもし。月里です。」
返事が無い。
「もしもし・・・・・もおっ、イタ電か!」
と仕舞おうとした時。ディスプレーの文字が目に入った。
『13:19 S 2km』
あっ、もしかしてこれは
「陽子ちゃん。今の着信音、何の曲だった?」
「着信音・・・。着信音がどうしたん?」
「あ、いや、ちょっとね・・・」
「あっ、彼氏からの電話なんでしょう?」
「彼氏?ち、違うってば、彼氏なんかいないわよ。」
「別に隠さんでもええやんか、彼氏だけ着信音が違うってやつやろ。えーっとあれは『FLY ME TO THE MOON』だったわ。そうそう私、この歌詞知ってる。♪Fly me to the moon and let me play among the stars Let me see what spring is like on Jupiter and Mars〜」
陽子ちゃんが昨日カラオケで散々聴かされた鼻にかかったような声で歌いだした。
「ちょ、ちょっとそんな呑気に歌っている場合じゃないわ。陽子ちゃん、逃げて!」
今は1時15分だ、あと4分ある。
「♪Fill my heart with song,and let me sing forever more〜ん?逃げて?ちょっと、なんで逃げなあかんの?」
「な、なんでって・・・。危険が迫ってるのよ。」
「危険?大丈夫やって、変な夢でも見てたんよ。それより彼氏ってどんな人?」
「だから彼氏なんていないって!」
正直に怪獣が出るなんて言えないし・・・、そんなやり取りをするうちに13時19分になってしまった。沖の海面が丸く盛り上がり巨大な何かが出てきた。
「な、何やあれ?」
「なんかタコみたい。」
あれはカーカ星人?いや違う。ほんとに色まで赤いもの。あれは単なる巨大なタコなのかしら?明石海峡だからタコというわけ?それにしてもアンチョコな怪獣だわね。
「瑠奈ちゃん!早く逃げるんよ!」
海岸は大パニックだ、でも人前では変身できない。
「陽子ちゃん。ちょっと私、忘れ物があるから先に行ってて!」
「忘れ物?」
瑠奈は海に向かって走り出した。
「瑠奈ちゃん、海なんかに入ったら危ない!」
瑠奈は携帯電話を濡らさぬよう片手に高く持ち上げ海に入っていった。
「このまま進んで水中で変身すれば、誰にも見られないわね。」
水深が胸のあたりまできた時だった。前方から今までの波とは遥かに違う高波がやってきた。
「きゃーっ!瑠奈ちゃ〜ん!」
砂浜にいた陽子は瑠奈が波に飲み込まれるのを目撃し、思わず両手で目を覆った。

***

「皆さん。早く逃げて!」
「!?」
陽子は聞きなれた声を聞いて、ゆっくりと手をどかしてみた。そこには海面から巨大な2本の柱が・・・さら上の方へ目で追ってみると・・・ビキニの水着姿・・・そして見た事のある顔。
「る、瑠奈ちゃん・・・」
「ほら、陽子ちゃんも早く逃げて!後は私に任せて。」
陽子はなぜ瑠奈が巨大化したのか理解できなかったものの、とにかく瑠奈ちゃんに変わりない。言われた通りに海岸から離れて避難した。
「これでみな避難したわね。陽子ちゃんも今見た事は忘れちゃうはず。それにしてもあの高波には驚いたわ。これもまた早押し練習の成果のおかげね。さて、いくわよ!」
瑠奈は大ダコに向かおうとした。が、あれ?足元がおかしい。全く動けない。
「あ、あれれ・・・うわっ! き、きしょくわりーっ!」
足元を見るとさっきの大ダコが両足首に絡み付いていて動こうにも動けない。足を動かそうとすればするほど、絡む力は強くなってくる。
「うっ、動けない・・・もおっ!しつこいわねえ、えいっ!」
一気に脚に力を入れると、何とか左足が触手から抜けた。が、拍子でバランスを失ってしまった。
「わっ、わああああっ!」
何とか両手でバランスを取ろうとしたものの叶わず右肩から倒れた。
「痛たーっ!」
何処に倒れたんだろう?砂浜にしては随分硬いなあと考えていると遠くから警笛が聞こえる。はっと目を開けると4つのライトの光が見える。それがだんだんと近づいてくる。
「きゃーっ、止めてー!」
海岸沿いを走るJRの線路に北西方向に倒れたのだった。瑠奈の目の位置がちょうど一番山側を走る上り線の線路の上だ。その線路上を列車がライトを輝かしながらこちらに向かってくる。50倍に巨大化したとはいえ100km/hのスピードで目の前をこちらに向かって突進してくる列車はさすがに恐い。でも、もっと恐かったのは運転手の方だ。いきなり線路上にビキニ姿の巨大な少女が倒れて、こっちを向いて叫んでいるのだから。
とっさに運転手は緊急ブレーキスイッチを押して非常ブレーキを掛けた。しかし1000トンを超える貨物列車のため急ブレーキを掛けても中々止まらない。巨大な美少女の顔がぐんぐん近づいてくる。
瑠奈は反射的に顔の前に手をかざし、目を固く瞑った。手のひらにガクンと衝撃を感じた後、恐る恐る手をどかしてみた。
「ふっ、助かった。」
目の前で無事に機関車が止まっていた。その時、瑠奈は運転手と目が合った。当然のことながら相手は慌てて逃げようとしている。
「ご、ごめんなさい。驚かしちゃって・・・大丈夫よ、何もしないから」
ふと機関車を見るとライトが2つ点灯している。
「あれ、おかしいわねえ・・・さっき見た時はライトが4つだったはず・・・」
と、その2つ海寄りの線路上に、いつのまにか電車が止まっている。この区間は複々線で列車が同時にやって来たのだった。
電車の方の運転手は大丈夫かなと先頭車を探してみると、あれ、あれれ。どうも様子が変だ。
「きゃっ、エッチ・・・」
先頭車は瑠奈の胸に突っ込んでいた。胸をどかしてみると、電車の正面は何ともなっていない。胸の膨らみがクッションとなったのだ。
「はあ・・・それにしても無事で良かった。急に線路に飛出しちゃってごめんなさい。今すぐ退くから。こうなったのもあの大ダコのせいだわ!あの大ダコ・・・あっ、そ、そこはだめっ・・・」
いつの間にやら左の脚の上に大ダコが乗っかっていて、そこから触手をビキニのパンティ−に忍ばせている。
「だ、だめ。そ、そこは・・・はあん・・・もおっ、えっちー!」
瑠奈の平手打ちが直撃し、気が緩んでいた大ダコは沖の方に飛ばされていった。
 やっとのことで瑠奈は立ち上がった。しかし倒れた跡には架線は切れて垂れ下がり、架線柱はぺしゃんこになり、レールはひん曲がっている。これじゃもう列車は走れない。
「わ、私、急ぐんでこれで失礼するわ。」
罪悪感を感じ、瑠奈は逃げるように海へ向った。

「確かこの辺に飛んでいったはず。」
周りを見渡しても大ダコらしきものは見当たらない。しかし岸からたいして離れていないのに水深は胸の辺りまでである。
「あれ?逃げちゃったのかな?でもこのまま帰るわけにもいかないし・・・。」
どうしようかと考えているうちに目の前をフェリーが横切った、甲板の乗客が驚いた様子でこちらを見ている。
「これじゃ、こっちが怪獣だわ。仕方がない、帰りましょ。」
と、岸の方を向いたその時、遠くの海面から突き出た触手が明石海峡大橋の主塔に巻き付き、橋の上によじ登ろうとしているのが見えた。
「しまった!急がなきゃ。」
瑠奈は泳いで明石海峡大橋に向かった。

「はあ、はあ、はあ・・・」
やっとのことで橋の中央部真下に着いた。大ダコはもう登って橋桁の横を吸盤で張り付きながら橋の中央部へ移動している。
「私も登らなきゃ。」
が、しかし
「きゃーっ!助けて!」
立とうとしたが足がつかない。明石海峡大橋中央部下の水深は110m。身長80mに巨大化した瑠奈でも足が届かない。
「はっ、はっ、はあ。危ないとこだった。ウルトラヒロインが溺れたなんて前代未聞だわ。」
なんとか淡路島側の主塔の台座部分に手が着いた。それにしても瑠奈は誰に助けてもらうつもりだったのだろうか?
 それにしても大きい。ケーブルを支える主塔は海面から297mの高さがある。
「仕方が無い、ここから登るか。」
まずは主塔に手を掛けて台座部分のピァーに上がった。でもそこからどうやっていいのかわからない。顔の辺りがちょうど道路なのだがケーブルから吊り下げられて橋桁を吊っているワイヤーが邪魔で上がれそうにもない。あとは主塔を一番上までの登るしかないのだが、主塔は瑠奈の身長の3倍の高さである。あきらめて一度淡路島に上陸し、道路上を歩くことにした。

 橋の中央部に出現した大ダコから人々が車を捨てて逃げてきた。その人たちが次に目撃したのは濡れたビキニスタイルの巨大美少女だ。それが胸を揺らし、滴を垂らしながら淡路島の方からやってくる。これにはGTSフェチでなくてもたまりません。男は皆、道端で立ち止まって瑠奈が通り過ぎるのを仰ぎながら眺めている。
 瑠奈にとっては幅30mの道路も、まるで畦道のようだ。路上の人や車を踏まないように慎重に歩くが、それでも吊り橋部分はさすがに揺れる。ケーブルを両手で手摺のようにしながら歩き、主塔の部分を屈んでくぐり抜けた。
「私ってこんなに重かったかしら?」
中央部にいけばいくほど橋がたわんで沈んでいく。5mも沈むのでその加減が素足の足の裏に確実に感じられる。
「だ、大丈夫かしら?」
びくびくしながらも何とか大ダコのところにたどり着いた。
「ふうっ・・・やっと捕まえたわよ。観念しなさい。」
橋の中央部へ行くほど手摺の代りになるケーブルが低くなるのでほとんど四つん場の状態で歩いてきたが、これでは攻撃できないので恐る恐る構えの姿勢を取った。手を放したところ意外と何ともない、じっとしているだけなら揺れも収まった。
「これなら重みで橋が落ちる心配は無いはね。さあいくわよ!」
しかし大ダコは何も喋らない。
こいつはもしかして喋らない風紀上問題ないオーソドックスなタイプなのかしら?でも以前のハサミを持った怪獣のこともあるし油断は出来ないわね。第一、さっきビキニのパンティ−に触手を忍ばせてきたし・・・。
そう考えているうちに、いつのまに足元に触手が迫って来た。
「そうはいかないわよ!」
とっさに得意の前転宙返りで触手を避け、大ダコの向こう側に飛び越えた。
「あっ、しまった!」
着地した時、ここは橋の上である事に気付いた。
「きゃーっ!」
いくら丈夫に出来ているとはいえ、巨大娘がジャンプしたらひとたまりも無い。瑠奈の着地したところから順に橋桁が崩れ落ちていった。瑠奈や大ダコ、車は橋もろとも海に落下し、海面には巨大な水柱が立った。
「あうう・・・溺れるうっ!」
瑠奈はとっさに落下する時に何かロープのようなもにに掴まった。瑠奈がロープのように掴めるものと言ったら・・・大ダコの触手ぐらいのものである。そんな事には瑠奈は気付かず、それを絶対に放さなかった。

「ここは・・・ここはどこ?あれ、私どうしてたんだっけ?」
気が付くと瑠奈は砂浜に打ち上げられていた。でもなんか様子が変だ。どこかの島のようだが生えてる草がみな盆栽のような松が生えている。
「あれ、ガリバー旅行記みたい。小人の国に流れ着いちゃったのかな?」
よっこいしょと立ち上がると島の向こうに吊り橋が見える。
「橋?・・・確か吊り橋といえば・・・。あっ、思い出した。大ダコを捕まえて、それから明石海峡大橋を壊しちゃったんだ。それにしても、もう直ったの?何ともなってないわ。」
よく見るとまた吊り橋の中央部にさっきの大ダコがよじ登っている。
「またやっているのね。でもなんであんなとこによじ登るのかしら。」
瑠奈は急いでその橋の左側にある大きなコンクリートのアンカレイジによじ登り、道路上を歩いた。その時に道路際の標識が目に入った。
『北備讃瀬戸大橋 長さ1610m』
「えっ!これは瀬戸大橋なの。そう言えば橋がいっぱい並んでいるわ。てことは前が岡山県で後ろが香川県。ずいぶん遠くまで流されてしまったわ。」
とにかくあの大ダコをやっつけなくてはならない。先ほどと同じくそろりそろりと大ダコに向かった。が、大ダコは瑠奈の姿を見るや否や逃げ出した。ずっと触手を掴まれて相当嫌だったんだろう。
「今度は逃がさないわよ!」
大ダコは岡山側の高さ175mの主塔によじ登りはじめた。瑠奈も負けじと主塔のX型の部分に足を掛けよじ登った。大ダコは主塔の頂上に上り詰めて左の端っこに身を寄せている。瑠奈もあともうちょっとで頂上というところで大ダコはケーブルを伝ってその先の島へゆっくり降りていった。
「ちょっと待ちなさい!」
一番上まで上って手を伸ばそうとしたがバランスを崩して落っこちそうだ。瑠奈は左側のケーブルに跨って支えようとした。
「あっ・・・あ、あん!」
ちょうどケーブルが瑠奈の股の感じるところに当たった。
「あ・・・ん・・・これは気・持・ち・い・い・!」
大ダコを捕まえるのを忘れ、思わず腰を動かしてしまう。
「はあーん!」
振動がケーブルを伝って橋全体が小刻みに揺れだした。そのうち主塔全体から不気味な金属のきしむ音が聞こえだしたが、そんなこと快楽に浸っている瑠奈は気付かない。
「い、いいっ!」
その時、ついに金属疲労が限界となった。
「きゃーっ!」
瑠奈の乗っていた岡山寄りの主塔が橋桁付近からポキリと破断し、瑠奈は主塔の先端に掴まったまま西側の海へ落ちていった。それと同時に主塔とケーブルで吊られていた橋脚もつられて崩れ落ちていった。
「あっ、いけない。ウルトラヒロインとあろう者がこんな事しちゃ。」
瑠奈は海の中で頭を冷やされ正気に戻り、立ち上がって大ダコを探した。すると橋から降りたすぐ手前の島から海に逃げようとしているところだった。
「見つけたわ。海だと負けるからこっちに来なさい。」
大ダコの足を強引に引っ張って瑠奈はその島に上陸した。ちょうどいい具合に大きな駐車場がある。看板に『与島パーキングエリア』の文字が見えた。
「これでもう逃げられないわよ!」
瑠奈は大ダコを頭上高く両手で持ち上げた。ん?・・・それにしても何やら胸の辺りがやけに軽い。もしかして・・・胸を見ると・・・
「キャーッ、恥ずかしい!」
な、ない。ビキニのブラが無い。急いで両手で胸を隠したくなったものの大ダコで手がふさがっていてできない。周りを見ても巨大なブラは見当たらない。ということは明石からここに着くまでの流されている間に外れちゃったんだわ。今までずっと乳丸出しだったんだ!うわーっ、どうしよう。パーキングエリアの小人達がポカーンとこっちを見ている。もうこうなったら開き直るしかないわ。
「これがホントのウルトラのチチーッ。なーんちって・・・」
そ、そういえば、これって星から来た婦警第4話、南海の大決闘の最後のオチと同じだわ。ということはこのタコは銀河大王蛸なのかしら?
健全なページはしっかりとチェックしているようである。でもこの小説は健全とは大きく異なるのでさらにつづく。
 瑠奈は愛想笑いをしたものの小人達はまだポカーンと見ている。こうなったら大ダコをカッコよくやっつけなければならない。大ダコの足を持ってハンマー投げのようにぐるぐる回して思いっきり投げ、手をクロスさせ光線一発。大ダコは空中で爆発した。
ふう、カッコよく決まった。再び小人達の方を見るとまたポカーンと見ている。その視線は今度は瑠奈の足元のようだ。見ると駐車場の車は横転したりひっくり返ったりで、ぐちゃぐちゃになっている。
「ご、ごめんなさい・・・」
しゃがんで一台ずつもとの通りにならべ直した。

やっとのことで直し終って飛んで帰ろうと立ち上がった時、先ほど破壊された北備讃瀬戸大橋が目に入った。
「あっ・・・」
何故だかあそこに熱いものを感じた。さっきの快感が思い出されたのだ。ここで瑠奈の心の中で天使と悪魔の争いが始まった。
「だめ、ウルトラヒロインたる者がそのようなことしちゃ。でも足が勝手に動いちゃう。」
ざぶざぶと海の中に入り、南の方向へ足が向いてしまう。そこで何とか逆方向に歩こうとした。しかし、いつの間にやら島の北側に架かる斜張橋の岩黒島橋に来ていた。大きさもちょうど手ごろだ。
思わず橋の上に上がり、ケーブルに跨って腰を動かしてしまった。
「私はこんな事したくないのに、体が勝手に動いちゃうー。でもすごくキモチイ・・・あはああああん・・・」
岡山と四国には知人はいないし、どうせ皆すぐ忘れちゃうんだから大丈夫だわ。
敵もおらず、まるで瑠奈のワンマンショーである。

 そのとき岡山県側の鷲羽山展望台から特徴のある笑い声が聞こえてきた。
「うけけ、急いで来た甲斐があった。うけけけけ!」
そう、JGC会員には何故だかカモフラージュは効かないのである。

5.『SUMMER STAGE』
−終−

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