ウルトラガール
3.『放課後』

 入学式の後の出来事以来、月里瑠奈は一躍、学校一のスターとなった。瑠奈を見るなり皆が「あれがすごい月里さんよ!」と言ってくれるようになったのだ。目立ちたがり屋の瑠奈にとっては鼻高々である。ただ何がすごいかは誰も憶えてないので、そのことが不満と言えば不満だった。もっとも、あの活躍を憶えている人がいるという事は、あられもない姿まで憶えているという事になるので、ま、それはそれでいいのだけれど。

「月里さん、何入るか決めた?」
「いや、まだ決めてないわ。」
今日から部活動を決める事になってるの。別にこれっていうのは決めてないんだけど、ウルトラヒロインなんだからそれに役立つのがいいわね。格闘技とか役立ちそう。となると柔道部か、うーん柔道着姿のウルトラヒロインていうのもねえ・・・・。どれにしようか。

 そんなこんなで放課後、もう既に瑠奈はあちこちから引き手あまたの状態だ。何せ学校一のスターなんだから。
「わかったから放して、一つずつ見学してから決めるから。」
というわけで一つずつ見学である。ソフトボールから始まってテニス、陸上、水泳、バトミントン、バレーボール、バスケット・・・
球技関係はどう考えても役立ちそうもない。陸上部は役立ちそうな気がするけど三段跳びとか見てるとウルトラヒロインの何に役立つのかわからんし、水泳部は水中戦に役立ちそうだけど、いつも水中とは限らないしなあ。どうも乗り気でなかったが最後に見たその部に目を輝かした。体操部だ。華やかなレオタードに身を包み、しなやかな身のこなしで回転技を決めている、あれならカーカ星人の触手から華麗に逃げられたわ。まさにウルトラヒロインうってつけの部だ。
「私決めた、体操部にするわ。」

***

 それから瑠奈は部活動にいそしんだ。ウルトラヒロインではドジばっかりやらかしている瑠奈だが、体操部ではみるみる実力を伸ばしていった。
そんな6月のある日の放課後、部活動中。
「月里さん。携帯鳴ってるわよ。」
1年B組のクラスメイトで、同じ部の北嶋菜穂が呼びに来てくれた。
「はーい。ありがとう、今行くわ。」
誰もいない更衣室に行くと『FLY ME TO THE MOON』のメロディが流れている。
「久しぶりに出動要請ね、ようしっ。」
ディスプレーを見ると、
『17:14 NW 3km』
とある。時計を見ると5時10分だ。急がなきゃ、そう思って番号を押し始めた。
「さあ、いくわよー」
通話ボタンに親指をかけて、携帯を持った右手を上に伸ばした。
「あっ、いっけない! またやってしまうとこだった! 今度は中の人たちを体育館の下敷きにしてしまうところだったわ。」
瑠奈は靴を突っかけて急いで人目につかないところを探した。プレハブの仮校舎はまずいし、校舎建設現場もまだ作業中だ。いい場所が見付からず結局体育館に戻ってきた。もう予定時刻は過ぎている。
「あー、どうしよう。」
と、体育館の裏側が目に付いた。よくある高校なら一服している生徒がいるような場所だが、瑠奈の通っている白薔薇女学院高校は都内でも有名なお嬢様学校なのでそういう生徒はいない。瑠奈はそこへ入り込み周囲に人がいない事を確認した。とはいっても体育館の裏側、幅は2mほど、こんなところで巨大化したら体育館なんてひとたまりもない。でも他に場所はない。
「仕方がない、いちかばちかやってみるか。」
番号を押し、空を仰ぎ両手を頭上にあげて、ぴょんぴょん飛び上がりながら通話ボタンを押した。他人が見てたら気が変としか思えない。

***

気付いた時は上空だった。成功したのかな? と恐る恐る下を見ると体育館は無事だった。
「ふっ、まずは成功ね。」

 現場上空に着くと早速、怪獣がビルを破壊している。ま、定番どうりだわね。
上空から急降下して怪獣に体当たりだ。背後のビルは粉々になった。
瑠奈は素早く立ち上がって数歩引き下がり相手の出方を待った。しばらくすると相手は2本足で立ち上がった。しかし何も喋らない。よく見ると両手はロブスターのようなハサミで、ふぉっつ、ふぉっつと鳴いてるんだか笑ってるんだかわからない声を出している。そういえば、どこかで見た事あるような怪獣だ。でもこういう子供向けテレビ番組は見た事ないので名前なんか分からない。試しに、
「あなた誰?」
と、聞いてみた。怪獣に対して名前を聞く方も聞く方だが、それでも相手は答えない。こういうオーソドックスなのは喋らないのかな。つまりこういう事ね。風紀上問題なのが喋れて、問題ないオーソドックスなのは喋らない。オーソドックスなのが風紀上問題だったら子供番組にならないもんね。
瑠奈は安心したものの、なぜだかちょっと物足りなさも感じた。
 こういうオーソドックスなのに対してはオーソドックスな作戦で行こう。まずは取っ組み合いになって、パンチや、キックだ。でもまあ、そう簡単には決着つかない。
そのうち相手は本気になったのか光線なんか出してきた。
いつもの瑠奈ならここで光線に当ってしまってピンチに陥るのだが今日の瑠奈は違う、回転技だ。華やかなブルーとピンクのラインの入った白のレオタードに身を包み、しなやかな身のこなしで後転宙返りで光線を避けていき、最後にはポーズまで決めている。
「決まった、10点満点!」
余裕綽々である。
 その時、朝から続いていた曇り空から雨が降り出した。
「あーっ!今日は雨降らないはずよ、また天気予報はずれた!傘持って来てなかったんだ。どうやって帰ろう。」
とてもじゃないがウルトラヒロインが戦っている最中に考える事ではない。
とっとと決着付けようと、今度は前方宙返りで怪獣に近づき頭部に蹴りを入れ着地した。
「決まった!」
と思ったが、着地した時に雨で濡れた路面に足を滑らしてバランスを失い、目の前にあった渋滞中の首都高速道路の高架橋に突っ込んでしまった。高架橋は瑠奈の胸の下で車ともども崩壊した。
瑠奈はバストの下でぐしゃりとアルミ缶を潰しているような感覚を薄いレオタードの生地ごしに感じた。急いで立ち上がろうとしたが、また滑って今度は後方の高架橋に尻もちをついた。後方の高架橋も車共々、瑠奈の尻で下敷きとなった。
「いてて、やっちゃった!」
とは言うものの薄いレオタードの生地ごしに胸で車を潰した時の感覚が何ともいえない。なぜだか股間部に熱いものを感じてしまった。
あっ、いけない! こんな快感に浸っている場合じゃないわ。と何とか立ち上がり怪獣に対して構えようとしたその時、怪獣が放った光線が瑠奈に命中してしまった。
「きゃーっ!」
吹き飛ばされて後方にあった大型スーパーの中央部を粉々にして倒れ込んでしまった。
「あー、いててて!」
瓦礫の中で立ち上がろうと瑠奈の直撃を免れた残った両側の部分に手をかけた。しかしそれも一瞬で崩れてしまった。
「あっ・・・で、でもなんか・・・」
これまた薄いレオタードの生地ごしに背中で感じる破壊感は何ともいえない。また股間部に熱いものを感じてしまった。
はっ、と我に帰って立ち上がって構えた。しかし怪獣の様子が変だ。さっきと目付きが変わっている、あの目付きはどこかで見た事ある。えーっと、たしか・・・そうだ、カーカ星人だ。という事は・・・。もしやと思い体の方を見てみた。レオタードは破れてない。なら安心だと思ったが、えっ、ともう一度よく見てみると雨で濡れて透けて見える。大事な胸と股のところは形くっきりだ。濡れてしまってはアンダーショーツなんて役に立たない。
「いやーっ、恥ずかしい!」
そう叫んだものの手遅れだ。怪獣はシュルッと触手、いや違う、光線を出した。その光線が瑠奈の手足首にぐるぐると巻き付いて怪獣に引き寄せられた。力が強くて全く抵抗できない。そのまま構えた姿勢のままズルズルと引き寄せられる。
「ふぉっつ、ふぉっつ、ふぉっつ、ふぉっつ」
さっきと鳴き方が全然違う。なんともいやらしい声だ。
「いやーん!やめて。なにすんのー!」
これじゃ前回と同じパターンだわ。今までの対戦者が男ばっかりで私がこんな姿を見せたものだからどうやら発情させちゃったみたいだわ。
触手のような光線で怪獣の前まで引き寄せると、ハサミで瑠奈の体の上を股の方から上へ向けてそっとなでた。
「や、やめ・・・あ、ああっ・・・」
薄いレオタードの生地ごしにすーっとくすぐったい快感が走る。ハサミが首のところまでくるといつのまにやら白い物を手にしている。何それ?と、よく見てみると、あっ、それっ!私のブラ! 一瞬で抜き取られてしまった。脱がさずにブラだけ外すとは手品師みたいな奴だ。
あーっ!胸を見ると雨で濡れて当然だけど、白いレオタードの生地ごしに乳輪が透けて色まではっきりと見える。案の定、乳首が立っているのもわかる。
「あっ、あっ・・・」
ハサミの先っぽでその乳首をつんつん突いてくる。瑠奈の体に快楽の電流が走る。
「あ、あああぁぁ・・・」
こんどは乳房をレオタードごしにハサミが揉みしだく。
「や、や、やめてー・・・・・あぁぁ・・・」
その言葉が通じたのか怪獣は動きを止めた。と思ったら今度は瑠奈を逆さ吊りの状態にした。
「キャーッ!」
いつのまにか怪獣はズボン(?)をずり下げてモロ出しだ。それが瑠奈の目の前にきた。結局こいつも風紀上問題じゃないの!
怪獣は瑠奈の脚を広げさせて股間の上をレオタードごしにハサミでそっとなでる。
「あ・・・あああ・・・」
さっき高速道路を胸で潰した時にすでに熱くなっているのでさらに感じてしまう。
『プッチン』
ハサミを瑠奈の股のところに入れ、レオタードを引き千切った。伸縮性のある生地はへその辺りまでずり下がり、アンダーショーツが丸見えとなった。濡れたショーツは半透明になってくっきりと大事なとこが丸見えとなり、その上をハサミがラインに沿ってなぞってくる。
「あああああぁぁぁぁぁ・・・」
もう股間部はすでにぐっしょりとなってしまったのだが、雨でわからないはず。と思ったが怪獣がハサミを瑠奈の股間部から離した時にハサミから糸状のものが伸びた。明らかに水とは異なる粘液である。これで怪獣のエロ心にますます油を注いでしまった。アンダーショーツもハサミで引き裂かれてしまい瑠奈の方もモロ出しとなった。
「いやー・・・ああああ・・・ん・・・す、吸い込まれそうぅぅぅ・・・」
そこへ怪獣のストローのような口がその粘液を吸い始めた。その口の当たり方とズルズルと音を立てながらの吸い方が何ともいえない。
「そ、そこは・・・だ、だめ〜・・・あ、あああ・・・」
勢いあまってストローがお豆も吸い付いた。
「いやーん、はっ・・・はっ・・・入ってきたあぁぁ・・・」」
ストローのような口が瑠奈のあそこにまで入ってきた。ますます濡れてしまう。
粘液を吸い終ると怪獣はそのまま瑠奈を渋滞中の道路の上に仰向けに寝かせた。空缶がつぶれるような感覚を背中ごしに感じて、また股間が熱くなってしまう。
いけない快楽にひたっている場合じゃないわ。このままだと私、本当に怪獣に犯されちゃう! でもぐるぐると両手足に巻きついた光線で身動きできない、前回のように噛みついたら何とかなるかもしれないが光線では噛み付きようがない。
怪獣が寄ってきた。でも、もうだめ、体力の限界がきたみたい。
怪獣に襲われようとするまさに寸前、最後の力を振り絞り光線で縛られている両足で怪獣の股を思いっきり蹴ってやった。怪獣はあまりの痛さにピョンピョン飛び上がり、そして倒れ込んだ。すると瑠奈の体を縛っていた光線が消えた。瑠奈は立ち上がって手をクロスさせ、おもいっきり力を入れた。
瑠奈の手から発した光線は怪獣を貫き、爆発炎上した。

 はあ、はあ、はぁ・・・なんとか勝った。でも前回の噛み付きといい、玉蹴りといい痴漢撃退法みたいなやり方でカッコ悪い勝ち方だ。飛んで帰る前に引き裂かれたレオタードを股のところで結んで空を仰いだ。ひょいと飛び上がったものの、その時に結び目がほどけてしまった。もう薄暗いし、いいやと思ってそのまま急いで飛んで帰った。馴れというものは恐いもので、だんだんこういう事に鈍感になってきちゃった。

***

 変身を解いて学校に戻った瑠奈は更衣室に急行した。レオタードは元に戻って何とも無いものの、どしゃ降りなので全身びしょ濡れだ。ただ更衣室に誰もいなかったのは幸いだった。びしょ濡れのレオタード姿なんて見られたら一体なんて言い訳していいのやらわからない。制服に着替えを済ませ急いで髪の毛を拭いていると、ドアの開く音がした。
「あら、月里さん。どうしたの? そんなにびしょ濡れで。それに急に部活動中にいなくなっちゃうんだもの、どこへ行ってたの?」
あちゃっ、小東先輩だ。なんて言えばいいのだろう?
「あ、いやーそのー・・・」
瑠奈が言葉に詰まっていると、小東久美子の後ろの方から声がした。
「あ、月里さんなら携帯電話がかかってきて用事があったみたいですよ。」
北嶋さんだ。
「そ、そうなんです。急に用事が入りまして急いで帰ったんですが、途中でひどい雨に降られまして・・・傘を持っていなかったんで仕方なく戻ってきて・・・」
「それならそうと言ってください。今度からお願いしますよ。」
「は、はい。今度から気を付けます。」
小東久美子が着替えを済まして出ていった後。北嶋菜穂に話し掛けた。
「助かったわー、ありがとう。」
「いいのよ、困った時にはお互い様よ。でも心配したわ。電話を受けに行ったら帰ってこないんだもの。なんか変な事でもしてるの?」
「変な事?」
まずい・・・ばれてしまったのか。
「たとえば・・・援助交際とか。」
「そ、そんなことしてないわよ!」
「冗談よ、冗談! お互いクラスメイトなんだし、これからも仲良くしましょ。私、傘持ってきているから一緒に帰りましょ。」
ふっ、あぶないあぶない。まさかウルトラヒロインだなんて言えないしね。それにしても援助交際か・・・似てるような似てないような・・・なんか複雑な心境。

3.『放課後』
−終−

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