はじめに

この小説は 、GTS小説として初めて読んだJUNKMANさん作『ウルトラルナちゃん』のあまりの面白さに影響を受け、その続編(?)を書いてしまったものです。



ウルトラガール
1.『それから』

「えーっと、ここをクリックしてと。・・・あっ、つながった!」
やっとインターネットに接続できたわ。今まで中学でしかパソコンを触ったことなかったし、学校ではとてもじゃないけどネットサーフィンなんてできなかったから、これで思う存分できるわ。このパソコンも両親に高校合格のご褒美にねだって買ってもらったものなの。設定にてこずったけれど、ここまでくれば後は楽ね。さて、どこから見ようかなあ・・・。

『このホームページの一部のページには、未成年の方が閲覧されるには不適切と判断される可能性があると思われる画像・小説等がありますのでご注意下さい』か、仕方がない未成年だからやめておこう。さて次はどこにしようか、あ、もうこんな時間。そろそろ切らないと後で電話代のことで怒られちゃうわ。次で最後にしておかなきゃ。未成年の方が閲覧されるには不適切と思われる画像・小説等があるって事は、リンクぐらいは大丈夫って事よね、それならばリンクをクリックと。えーっ、リンク先も未成年者禁止ばっかりみたいだわ。でも下の方なら大丈夫そうね。じゃ、適当に選んでクリックしてと。
なになに『ウルトラヒロイン募集』???女性がウルトラマンに変身するということかな、という事はテレビ番組の出演者募集てことね。そうだ私、小さいときから芸能界に憧れていたんだわ。自分で言うのもなんだけど、顔には自信があるし、スタイルもばっちり。これをステップに芸能界入りも夢ではないわ・・・。そうだ、試しに受けてみよっと。
まずは『契約書をお読みください』だって、こんな長いの一々読んでられないわ。承諾、承諾っと。次に名前ね、
*姓:月里 *名:瑠奈
*年齢:15 *職業:高校生
*住所:・・・・・・・・・・・・・・
これでいいわね。申込ボタンをクリックと。

クリックした瞬間、画面が一瞬強い光を発し、気を失ったような気がしたが、そんなこと瑠奈は気に留めなかった。数秒後、画面が変わり『明日午後2時、下記の場所へお越しください』と表示された。
「明日がオーディションね、ガンバロっと」


 次の日、東京近郊のベットタウンに住む瑠奈は、市の中心部にある指定された場所へ行った。オーディションなので思いっきり着飾っている。

「ここかなぁ」
そこにはバブル景気のときに計画され、バブル崩壊後に完成した新しいビルが建っていた。
「えっと、最上階の25階ね」
ただでさえテナントが少ないうえに、今日は日曜日。ビルの中に入っても人影は見られない。エレベーターで25階に着き、窓の外を見ると、周囲には高くても10階建程度の古いビルが建ち並ぶぐらいなので、眺望は抜群。快晴の空の下、遠くに海が輝いて見える。
瑠奈は景色を眺めてから、指定場所に向かった。

「お待ちしておりました。」
ドアを開けると二十歳過ぎの女性が1人、対応に出てきた。
「月里瑠奈さんですね。」
「はい、月里瑠奈です。よろしくお願いします。」
部屋には机と電話とパソコン、他には何もなくガラーンとしている。他に人影はない。
「わたし1人だけですか?」
「ええ、あなただけです。」
瑠奈は心細くなったが、すぐに、
「まもなく時間です。こちらへ。」
と、奥の部屋へ招き入れられた。ドアを開けるとその部屋はがらんどうで何もない。ドアが閉められ、瑠奈は1人だけにされた。そして天井のスピーカーから
「指示があるまでそのままお待ちください。」
と、さっきの女性の声が聞こえた。
それから数分後、
「次のドアを開けて中にお入りください。」
と、指示が出された。次は面接だな、と思った瑠奈はドアをノックした。
でも返事がない、仕方ないのでゆっくりと開けた。
「失礼します。月里瑠奈です。」
その時、ドアの向こうからの強い光を浴びて、瑠奈は気を失った。

***

 どれくらい時間が経ったのだろうか、一瞬のような気がするし、数時間だったような気がする。気が付いたとき瑠奈は、ミニチュアセットの街中に立っていた。さっきエレベーターで着いたとき眺めたのと同じくらいの高さの眺めである。
「東京のセットね。さすがに東京タワーはミニチュアでも大きいわ。それにしても、よくできてるわね。日光鬼怒川のテーマパークみたい。いや、それよりうまくできてるわ!」
ミニチュアセットの街中にいるっていうことは、いきなりテストさせる気かな?と、思ったと同時に、上の方から、さっきの女性の声がした。
「さあ、始めて。」
え、なにを。と、思ったら。よくあるタイプのいかにも怪獣、といった感じなのがビルを壊しながらこちらにやって来る。
いきなり始めろ。と、いわれても困った瑠奈は、聞き返した。
「始めてって・・・私の好きなようにやっていいのですか?」
「好きなようにどうぞ。」
そう言われれば、思いっきりやるしかない。あの中には人が入ってるのね。と、思ったんだけどテストなんだから精いっぱいやらなきゃと思って、まずはジャンプしてキックで攻撃だ。そのまま怪獣と共にビルに倒れ込み、一瞬のうちに押しつぶしてしまった。
『あっ、壊しちゃった!』って思ったけれど、好きなようにやっていいって言ったんだから私には責任ないわ。
それから怪獣と取っ組み合いになって、パンチや、蹴ったりしたんだけど、ぜんぜん決着つかないし、その間に路上のミニカーを何台もぐしゃりと踏み潰しちゃった。そのミニカーもよくできていて踏むと爆発炎上するの。さすがに凝っているわねって感心しているうちに、なんだか急に疲れてきちゃった。もうそろそろ『終了です。』って言われるかと思ったんだけど、それもなし。そのときフラフラになってきた私を怪獣が押し倒してきた。危ない!と思った瞬間、背後のビルに倒し込まれた。私は崩れたビルの瓦礫の上で仰向けに寝ている状態になって、怪獣が上に乗っかってきて胸やら触りだしてきた。
「ちょっと、何やってんのよ。スケベー!」
でも急に疲労感に襲われ何もできない。そうこうするうちにスカートの端をくわえて、引き裂き始めた。
「わあああ、ちょっと、これ私のお気に入りの服なのよ!後で弁償してもらうから!わあああー誰か来てー。お願ーい!」
叫んでも空しく響くだけで、誰も来ない。そうこうするうちに服はぼろぼろにされてしまった。
その時、例の女性の声で、
「光線を使うのよ、光線を。手袋をしているでしょ、手先に力を入れて、手をクロスさせて!」
見ると、今まで気付かなかったが長めのゴムのような手袋をしていた。瑠奈は最後の力を振り絞り、手先に力を込め、手をクロスした。その瞬間、光線が出て、至近距離の怪獣に当たった。
相手は二度と動かなかった。
「ホッ、これで終了ね。うまくいったかしら。」
緊張が緩んだ瞬間、瑠奈はそのまま気を失ってしまった。

***

「大丈夫ですか、月里さん。」
気付いたときには、最初に待たされた部屋の床の上で寝かされていた。さっきの女性が覗き込んでいる。
「わ、わたし・・・」
「独りで帰れますか?」
「は、はい・・・」
「それでは、こちらからお帰りください。詳しい事は明日説明します。」
服を見ると何ともなってない、体にも擦り傷はなく、痛みもない。ただ疲労感だけはある。
私、いつのまに寝ちゃって、さっきのは夢だったのかしら?
 瑠奈は入ってきたときのドアから出て、そのまま帰宅した。しかしこの疲労感は15年間生きてきた瑠奈にとって経験したことのないものであり夕食後すぐ寝てしまった。


 翌朝、10時間以上寝たにもかかわらず、いまだに疲れが取れない。頭もボーっとする。そんな中で瑠奈は朝食のトーストをかじりながらテレビをつけ、思わず声を上げそうになった。その画面には昨日の自分が映っていたのだ。それも怪獣と戦っているときのが。あれ、もう放送なの?という事は夢じゃなかったのね。でもまだ合格なんて言われてないのにおかしいなと思ったものの、両親にはまだ話していなかったので急いでチャンネルを変えた。でもどのチャンネルに変えても同じように自分が映っている。なんで子供番組ばかりなのよ、と思ったが、いつものニュースのアナウンサーが怪獣が出現し、かなりの建物が崩壊、道路上の車両がつぶされた、と報道している。ということは、これは子供番組じゃなくってニュースなの?でもどうして私が出ているわけ?しかし何故だか自分の姿の部分のだけピントが合わないのか、ぼやけてハッキリ映らないので家族は私ってことに気付いてないみたい。でも自分には昨日やったことだから自分自身だってことがわかる。
これ、一体全体どうなってるの???

 朝食もそこそこに、瑠奈は昨日のビルに向かった。ドアを開けると昨日の女性が出てきた。
「あら、おはよう。月里さん。」
「いったいどうなっているの、これ。」
瑠奈は自宅から持ってきた新聞を差し出した。そこには一面トップに昨日のことが載っていた。ここの掲載写真もテレビと同じく自分のところだけがぼやけている。
「あなたの昨日の活躍よ。それが何か。」
「なんでテレビのオーディションを受けて、現実に怪獣を倒したことになるわけ?」
「はぁ?テレビのオーディション?」
「そうよ、『ウルトラヒロイン募集』ていうから申し込んだのよ。」
「確かに、『ウルトラヒロイン募集』ってしたわよ、でもテレビとは一つも書いてないわよ。」
「えっ!」
女性が、パソコンを操作して例のホームページを表示させて言った。
「ほら、ここにはそんなこと書いてないわよ。」
確かに『契約書をお読みください』のところには、テレビ出演とかは一切載っていない。その代わり異星人の侵略に対する防衛とかが載っている。
「あなた、ちゃんと読まなかったわね。」
「はぁ、はい。」
「でも承諾しちゃったのだから仕方がないわ、合格もしちゃったしね。」
そんなあ、こんなんだったら申し込まないわよ。と瑠奈は後悔したが、相手が続けて言った言葉に、目立ちたがり屋の瑠奈の心が動かされた。
「あなたルックスいいし、スタイルもいい。そんなのが、ウルトラヒロインとして、巨大化して活躍してごらんなさい。世の注目の的、まさにスターよ。」
「えっ!」
「ほら、新聞にも『謎の巨大美少女、怪獣を撃退』とあるわ。」
「で、でも親にばれたら、まずいし。第一、危ないし・・・」
「その点は大丈夫。前任者の失敗から今回からばれないように強化策を取ってあるの。だからテレビや新聞の映像もあなたのところだけ、ぼやけてるでしょ。あなたを見た人の記憶の忘却も激しく数分以内であなたのことは忘れちゃうわ。だから報道でもあなたの事は詳しく書かれていないでしょ。というより書けないのよ忘れちゃってて、それでも写真を見れば、ぼやけてても巨大美少女だってことぐらいはわかるみたいね。ただし、なぜだかJGCとかいう人たちだけにはこの対策は効かないみたいなの。でも彼らはただ熱狂的なギャラリーに過ぎないから別に心配ないわ。あと巨大化したとき受けたダメージは、変身を解いたときにすべてクリアされるから怪我とかの心配も不要。だから昨日も、何ともなかったでしょ。」
「でも、疲労感だけは今だにするわ。」
「それは仕方がないわ、巨大化したんだからエネルギーの消費が激しいのよ、その日の体調にもよるけど遅くても10分以内に決着をつけたほうがいいわね。」
瑠奈の気持ちは、やりたい方に傾いてきた。ウルトラヒロインとしてカッコよく活躍して世間から注目されるなんて、まるで夢のようだ。それに、巨大化したときの優越感と、何故だかわからないが破壊したときの何ともいえない快感が忘れられなかったのだ。でも一応聞いてみた。
「きのう、建物とか壊しちゃったんだけど大丈夫だったのかなあ。本物だとは思わなかったから。」
「その事なら心配ないわ。壊したことによって復興需要がでるし、公共投資もそれらにまわされるわ。あなただって諫早湾干拓や長良川河口堰なんて使う当てもないものに税金を使って環境破壊されるよりはいいでしょ。財政赤字だというのに無駄な公共事業するんだから、辺境宇宙のさらに極東の国のやる事には理解できないわ。まぁ、これで景気が回復するかもしれないけど、だからって株とか買ったらだめよ、インサイダー取引になっちゃうから。」
これって壊してもいいって事よね。これでもう決心できたわ。
「わかったわ、私やる。」
「じゃあ、これで決定ね。」
「でも、なんで私みたいな普通の女の子がウルトラヒロインに・・・?」
「前任者が帰還後、それから数年間は襲来が無いのがわかっていたんで後任は特に決まっていなかったの。最近また襲来するのがわかって、まあ、その中には風紀上問題なのもいるけどね。そこで後任を探していたの。本来なら青年宇宙協力隊がすることになっているのだけど、ただでさえ少子化のうえに辺境宇宙だとなかなか後任が決まらなくって・・・。そこで今回地球で募集することとなり、あなたは申込ボタンをクリックした時の審査で合格したの。そこで、きのう午後2時過ぎに怪獣が出るのは事前にわかっていたんで、いきなり初出動ていうことに。それにしても間に合ってよかったわ。」
「そうだったの。ところで名前はどうなるの?ウルトラヒロインなんだから、かっこいいのつけなきゃ。」
「名前なんて、後からマスコミか誰かが勝手につけてくれるもの。自分でつけるものではないわ。」
「でも・・・、そうだ、ウルトラ瑠奈がいいわ。」
「だめよ、前任者がその名前だったんだから。でも、もうこれに決まったみたいよ。」
と、差し出したのはスポーツ新聞で青地に赤い字でデカデカと『謎の巨大美少女、ウルトラガール登場!?』とあった。
「えっ、ウルトラガール・・・。うん、いいわ、それに決めた。」
「そうね、その名前なら確か空きがあったはず。それにしても、どうしてこの国の人たちは巨大ヒーローやヒロインを見ると『ウルトラ』って付けたがるのかしら? まあいいわ、次に変身方法ね。昨日は緊急だったんで、あのような形で変身したけれど、次から自分でしなくてはならないの。昔はフラッシュビ−ムしかなかったけど、あんなの常に持ち歩くのも面倒だしね。そこで最近はいろいろな方法があって、例えば両腕にブレスレットをつけるというのがあるのだけれど、高校生がブレスレットをつけているっていうのもねぇ、生徒指導に取り上げられるのがおちね。他にヨガの応用っていう方法もあるけれど、他の人に真似されちゃ困るし、まぁ実際にされちゃったんだけど・・・。うーんそうねぇ、あっ、ちょっとバックの中見せて。えーっと、あっ、これなんかどうだろう。」
手に取ったのは携帯電話だった。
「これ、いつも、持ち歩いているんでしょ?」
「そうですけど。」
「それじゃ、これに決まりね。ちょっと待っててね。」
それを手に女性は隣の部屋に入っていき、5分ぐらいで戻ってきた。
「使い方を説明するわね。通常は電話として使えるけれど、非常時には早期警戒装置として敵の襲来を感知したらベルが鳴るわ。間違えないように普段の呼びだし音と変えてあるから、ディスプレーを見て敵の襲来地点と予定時刻を確認して。そうしたらまず13934591を押して#と*を同時の押す。次に21046993を押してまた#と*を同時に押し、通話ボタンを押せば変身できるわ。ただし、その時には誰にも見られないように注意して、あなたがウルトラヒロインだって事がバレちゃうから。次に変身したら必ず手袋が装着されているから、それで光線を出せるし空も飛べるわ。光線は昨日使ったから解るでしょ。でも変身したからといって、すぐには使えないの、ロックがかかっているから。」
「えーっ、どうしてー!」
「最初から一発で倒しても面白くないでしょ、歴代そう決まっているんだから。一度はピンチにならないとギャラリーから不満が出るのよ。」
「えー、そんな!」
「歴代そうやってきたんだから何とかなるもんよ。あと最後に変身を解くときには飛んでいかなきゃならないの。これも歴代こうしているから踏襲してね。」
「は、はい。」
「これで一通り説明は終了ね。私の仕事も終わり、やっと帰れるわ。それじゃ月里さん、がんばってね。」
女性が奥の部屋に入っていった。それに対して瑠奈もとっさに追いかけた。
「あっ、ちょっと待って!」
瑠奈も一緒にその部屋に入った。
女性はさらに奥、昨日瑠奈が開けて気絶した例のドアに手をかけていた。
「あなた、一体誰なの?」
「わたし? 私の名前はあなたと同じ、ルナ。乙女座ゼータ星から後任者を探しに来たの。そうだ、何かあったらここに連絡して。」
そう言って、瑠奈に名刺を差し出し、部屋に入って行き、バタンとドアが閉った。
「待って!」
瑠奈も急いでドアを開けたが、そこには人の姿はなく何もないがらんどうの部屋だった。窓から眺めると快晴の空に1点の輝く光がだんだんと遠ざかり、やがて見えなくなった。

 瑠奈は渡された名刺を見た。
そこには、e-mailアドレスと共に『ルナ201-10B(諸星ルナ)』とあった。

1.『それから』
−終−

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